森友学園問題で追い込まれている安倍晋三首相は25日の自民党大会で、憲法9条に自衛隊を明記する憲法改正の実現へ、並々ならぬ意欲を示した。財務省の文書改ざんは冒頭、短く謝罪しただけ。持論の改憲で局面打開&強行突破したい思いが垣間見えたが、現状の改憲案に党内で反対もあり、首相は森友問題を引きずったまま。思いとは裏腹に雲行きは、厳しい。

 首相は総裁演説の冒頭、財務省の文書改ざんについて「国民の皆さんに深くおわびしたい」と謝罪し、党員に深く頭を下げた。ただ、言い回しは前日の全国幹事長会議とほぼ同じ。「2度と起きないよう、組織を根本から立て直す」と訴えた。「よし」「頑張れ」の声が出たがヤジは飛ばず、混乱を懸念した首相周辺を安堵(あんど)させた。

 謝罪時の口調や表情と対照的に、首相が高揚感を高ぶらせたのが、憲法改正への言及。「いよいよ結党以来の課題である憲法改正に取り組む時が来た。9条においても改正案をとりまとめる」と明言。「自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とうではありませんか。今を生きる政治家、自民党の責務だ」。何度も拳を握りしめ、自身を鼓舞するように声を張り上げた。

 ただ、党内の改憲議論は割れたまま。党改憲推進本部がまとめた改憲4項目の条文案は、党大会に何とか間に合わせたもので、石破茂元幹事長らは反対。この日来賓であいさつした公明党の山口那津男代表は憲法に触れず、差し迫った状況にないことを示唆した。

 実際に、首相サイドは年内の国会発議も念頭にあったが、森友問題を引きずったままでは環境整備が進むはずもない。首相が正面突破を目指そうにも国民の支持も離れ始めている。森友問題での信頼回復がなければ、この日の熱意はから騒ぎに終わる恐れもある。

 今週、森友問題は大きなヤマ場を迎える。26日は参院予算委員会集中審議、明日27日は佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問で、それを受けた集中審議も検討される。改ざんの背景、昭恵夫人の「関与」について国民が納得できる事実が出なければ、首相はさらに追い込まれそうだ。【中山知子】