福田淳一財務事務次官のセクハラ問題で打撃を受けた安倍政権を、加計学園獣医学部新設計画をめぐる決定的な「新証拠」が直撃した。愛媛県職員らが首相官邸を訪れた15年4月2日の当日、柳瀬唯夫元首相秘書官との面会予定を記したメールが、内閣府から文科省に送られていたことが20日、分かった。柳瀬氏の発言を詳細に記した「愛媛文書」の内容と一致し、面会を否定する柳瀬氏の「うそ」が露呈した形だ。「加計ありき」の色合いがますます強まり、安倍晋三首相はさらに厳しい立場に追い込まれそうだ。

 「どっちがうそつき」論争になっていた、「愛媛文書」と柳瀬氏の発言。この日、愛媛文書の信ぴょう性を裏付けるメールの存在が明らかになった。加計学園関係者や愛媛県、今治市職員らが15年4月2日に首相官邸を訪問した当日、訪問の数時間前に内閣府から文科省に送られたもの。一行が、まず内閣府を訪れた際の様子が記された中に、「本日15時から柳瀬総理秘書官とも面会するようです」と、柳瀬氏との面会予定を告げる記載がある。

 「愛媛文書」にも、柳瀬氏との面会は「15時」と記されており、メールと愛媛文書の内容は一致している。一行と面会した藤原豊・内閣府地方創生推進室次長(当時)の言葉として、「制度改正の実現は首長のやる気次第。熱意をどれだけ示せるか」などの記載があるが、「愛媛文書」での藤原氏や柳瀬氏の発言内容と同じ。「愛媛文書」の信頼性が高まった。

 内閣府によると、文書は今月17日に発見。野党の合同ヒアリングに出席した内閣府の担当者も「(柳瀬氏との面会は事実という)見方が強まった」と、認めざるを得なかった。

 メールには、面会が加計学園主導だったことを示す記載も残っていた。面会者の「序列」では、学園関係者がトップ。野党はヒアリングで「官邸との面会者の主体は、加計学園。県と今治市は単なる随行だ」と、「加計ありき」の面会だったとも指摘した。

 柳瀬氏は自身の記憶を根拠に面会を否定してきたが、愛媛文書の信頼性が高まったことで、同文書に示された「本件は首相案件」という柳瀬氏の発言内容の信ぴょう性も、アップ。昨年1月20日に計画を初めて知ったとする首相の国会答弁にも、疑問符がついた。

 首相訪米に同行していた柳瀬氏は20日、帰国。経産省内で取材に「呼ばれたら、国会でしっかり話したい」と述べた。国会運営をめぐる与野党対立の影響で、23日に予定された柳瀬氏の参考人招致は見送りになったが、野党は柳瀬氏が昨年7月の参考人招致で、「記憶にない」を連発したことを踏まえ、「うそをつけば偽証罪に問われる場に出ないとだめ」(立憲民主党の枝野幸男代表)と、あくまで証人喚問への出席を求める。主張の根拠が揺らぎ、安倍官邸の理論武装が一気に崩れる可能性もある。【中山知子】