6日未明の北海道の地震で、最大震度7を観測した厚真町では発生から4日が経過した9日も、全域断水が続いている。住民の命をつなぐ水のインフラ復旧の見通しは立っていない。8月に稼働したばかりの富里浄水場が裏山の崩壊で破損。町は、8月以前に使用していた旧浄水場を再稼働する方針だが、それでも復旧に1~2カ月かかる可能性がある。本管の破損箇所や下水道の調査も未実施だが、冬が来れば工事は難しく、時間との闘いとなる。農業用水にも多くの被害が出ており、来年の作付けに影響する可能性もある。

午後6時半。勤め帰りに役場近くの給水所に水をくみにきた女性は「そんなにかかるんですか? クラッときちゃう」としゃがみ込んだ。「高齢の両親がいる。自衛隊のお風呂は本当にありがたいけど、冬場は無理。なんとか早く、復旧してほしい」。

厚真町の飲食店の女性(50)は「店は水が出ないと営業もできない。1~2カ月となると」と絶句。電気は8日に通じたが、水は営業になくてはならない。「給水所の水で営業しては申し訳ない。長期化するなら、水の調達方法を考えないといけない」と話した。

町では地震発生初日に2カ所だった給水所を、9日までに常設7カ所、時間制限設置を6カ所の計13カ所に拡大した。断水長期化の原因は8月に稼働したばかりで、全町約2000世帯に上水道を送っていた富里浄水場が山の大規模崩落で被災し、復旧のめどが立たないからだ。

町では8月以前に使用していた旧新町浄水場を再稼働して対応する方針だが、「それでも復旧には1~2カ月かかる可能性がある」との見通しを示した。

厚真町の11月の最低気温の平年値は、マイナス2・1度。12月になれば平均気温はマイナス3・7度。工事は難しい。新町浄水場では2週間前に撤去した浄水設備の電線をこの日、再敷設。水道課職員は「1~2カ月より短期で復旧したい」と作業を急いでいる。

米どころの町の主要産業である稲作に必要な農業用水も大打撃を受けている。稲刈り前で8月下旬には水田の水は抜いてあったが、各地で水田が割れ、用水、排水路が寸断された。東和地区の農家の男性は「農地も用水もズタズタ。みんな来年の田植えができるのか」と訴える。

今年導入された厚真ダムからの導水管も地中で寸断され、土砂崩れで従来の用水が止まる被害も多数確認されている。富里地区では乾かしていた水田の排水路が土砂で埋まり、再び水田に水がたまって稲刈りもできない状態だ。男性は「激甚災害に指定されても厳しい。農業をやめる人も出てくる」と話した。【清水優】