「映画看板の街」に幕を下ろした東京都青梅市が、今度は「猫の街」として地域活性化を目指す。

青梅市は古い街並みを生かした「昭和レトロの街」として観光客を集めてきた。その目玉となっていたのが懐かしい邦画、洋画の映画看板だ。市内唯一の映画看板絵師、久保板観(ばんかん)氏が描き、商店の外壁などに20枚の大型看板が掲げられていた。

看板は94年に最初に設置された。3年に1度ほど久保氏が新作を描き、掛け替えしていた。しかし、久保氏が今年2月に死去したことで新作の供給が停止。老朽化した看板の危険性なども指摘されていた。

9月の台風24号で数枚の看板が吹き飛んだことで、管理する住江町商店街振興組合が撤去を決断。21日までに作業を終了した。同組合副理事長の横川秀利さん(83)は「寂しい。平成の初めに看板の設置が始まり、平成の最後に役割を終えました」と感慨深げだった。

看板は消えても、レトロな街並みは残る。そこで同組合が新たな観光の目玉として考えているのが「猫」だ。もともと青梅は猫マニアから注目されていた。墨絵作家の有田ひろみ氏ら地元出身・在住のアーティストが街のあちこちに猫の絵やオブジェを展示。住吉神社の招き猫や赤塚不二夫記念館の「菊千代大明神」も癒やしスポットとして人気になっている。

8月には嵐の大野智(37)がプライベートで、オブジェが飾られた「猫かいぐり公園」や「にゃにゃまがり」(7つの曲がり角がある細い路地)などの名所を訪れ、ファンクラブ会報でそれを知った女性たちが今も青梅を訪れている。

青梅は古くから養蚕が盛んで、カイコや繭のサナギを食べるネズミを退治する動物として猫が飼われ、親しまれてきた。「今度は昭和レトロと猫の両輪で街を盛り上げていければ」と横川氏。街中に猫の絵やオブジェを展開したり、猫とアートの美術を建設するプランもあるという。【田口辰男】

◆青梅(おうめ)市 東京都西多摩地域最大の市で、人口約13万5000人。古くから青梅街道の宿場町として栄えた。90年代に入って、街道沿いの空き店舗を活用した街おこしがスタート。03年には漫画家の赤塚不二夫記念館が設立された。赤塚さんと青梅にゆかりはないが、若い頃に映画看板絵師をしていた赤塚さんが「映画看板の街」として売り出した青梅に興味を持ち、設立をOKしたという。