2020年東京オリンピック(五輪)を記録する公式映画監督に、日本人で初めてカンヌ映画祭で審査員を務めた河瀬直美監督(49)が決まった。23日、大会組織委員会が発表した。映画は組織委解散後の21年春に完成予定で、その後、国内外で公開される。現時点で配給映画会社は決まっていない。

河瀬監督は会見冒頭「自分に与えられた役割をしっかり全うしていきたいと考えております。等身大で自分自身ができることを全うしていきたい」とあいさつした。

また、高校時代バスケットボールで国体に出場したこともあるという河瀬監督は「勝ち負けでなく、肉体からほとばしる何かをスポーツにぶつける人間の可能性がある」とした上で、「歴史的な2020を記録させていただく役割というのは、私が映画監督になったのはこのためなのじゃないかと思うくらい」と語った。

河瀬監督は97年カンヌ映画祭で新人監督賞を史上最年少で受賞。13年には日本人監督で初めて同映画祭で審査員を務めた。

1964年(昭39)の東京五輪では故・市川崑監督が公式映画を担当。翌65年3月に映画「東京オリンピック」が公開された。50歳を目前に脂ののりきった市川監督がメガホンを取り、1950万人を動員。01年の宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」まで、実に36年間この記録は破られなかった。

この動員数などを国際オリンピック委員会(IOC)は評価し、五輪史において、最高傑作との呼び声が高い。その評価を受け、市川監督は72年ミュンヘン五輪でも公式映画の制作に携わった。

◆河瀬直美(かわせ・なおみ)1969年(昭44)5月30日、奈良県生まれ。大阪写真専門学校映画科卒。97年に初監督作「萌の朱雀」がカンヌ映画祭の新人監督賞。00年「火垂」はロカルノ映画祭で国際批評家連盟賞、欧州国際芸術映画連盟賞。03年「沙羅双樹」はカンヌ映画祭コンペティション部門に選出された。