東京都江戸川区に流れる新中川の河川敷で、自分で食べるために野生のカルガモ2羽を捕獲したとして、警視庁葛西署は1日、鳥獣保護法違反の疑いで江戸川区在住のベトナム国籍の男性会社員(32)を書類送検した。男性は調べに対し、日本の食事が口に合わなかったと説明し「自分で捕まえて調理しようと思った」と容疑を認めている。

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葛西署によると、昨年8月12日夜、新中川付近を無灯火の自転車で走っていた男性に警官が職務質問をすると、自転車のかごにはカルガモが2羽、横たわっていたという。警官が「どうしたんだ?」と聞くと、男性は「食べるために捕まえた」と説明した。

男性は17年7月に来日し、技能実習生として都内の会社で配管工として働いていた。任意の事情聴取に「川沿いにカモがいると知っていて、夜、動かずに休んでいるカモを狙って後ろからソッと近づき、手で捕まえた」と捕獲当時の様子を克明に答えた。同署によると、男性はカモを捕まえた後、地面にたたきつけて殺し、かごに入れていたという。

男性は「ベトナム人の知り合いから『(日本では)野生動物を捕ったらダメだ』と聞いていた。捕まえたらダメだと分かっていた」と、違法性を認識していたことを認めた。にもかかわらず、カモを捕まえた理由を聞かれると、自分で調理しようと思ったとし、「日本の食事が口に合わず、自分の欲に負けて軽率な行動を取った。反省しています」と供述したという。

現場は、都営地下鉄新宿線・一之江駅から徒歩約3分の距離にある新中川沿いの河川敷。芝が生い茂り、犬の散歩やジョギングのコースとして親しまれている。新中川は旧江戸川に合流して海に注ぐことから、秋口にはハゼやスズキも釣れるなど、鳥のエサとなる魚も多く生息している。男性が書類送検された1日も、カルガモなどの渡り鳥や海鳥が多数、水面を泳いでいた。近所に住む男性は「鳥は芝生で、よく日なたぼっこをしているけれど、人が来たらすぐ逃げる。捕まえるのは、難しいのではないか?」と驚いた。

捜査関係者は、食用にカルガモを捕獲したという今回の事件について「珍しい。あまり聞いたことがない」と話した。【村上幸将】

◆鳥獣保護法 鳥獣保護法では、野生の鳥や哺乳類は原則、捕獲や殺傷、飼育が禁止され、鳥類の卵の採取も禁止となっている。一方で毎年11月15日から翌2月15日には狩猟可能な区域で、認められた48種の狩猟鳥獣は狩猟、捕獲できる。カルガモも48種に入っている。また学術研究や生活環境、農林水産業など生態系に関わる被害防止など、定められた目的で一定の要件を満たし環境大臣や知事、市町村長の許可を受けた場合も狩猟と捕獲は可能だ。都内における同法違反容疑での摘発は異例で、最近では14年に高尾署がニホンジカを狩猟した人を書類送検した件がある。