107日ぶりに拘束を解かれた日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が6日午後、変装姿で保釈された。会社法違反(特別背任)などの罪で起訴され、東京拘置所(東京都葛飾区)に勾留中だったが保釈保証金10億円を納付して保釈された。作業服姿で軽ワゴン車に乗り、報道陣を引き連れて都内を駆ける前代未聞の保釈劇となった。

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午後4時半すぎ。東京拘置所の玄関前。ゴーン被告は空色の帽子、メガネに白いマスクで顔を隠し、上下を濃いグレーの作業服という変装姿で現れた。作業服には工事用の反射帯も着用するなど、前会長は徹底して作業員になりきっていた。この人物が、10人近い刑務官に囲まれていなければ、ゴーン被告と分からなかったかもしれない。

午後4時15分ごろ、玄関正面に緑色の営業車ナンバーをつけた黒い大型ワゴン「トヨタ・ハイエース」が横付けされ、数分後に銀色の軽自動車ワゴン「スズキ・エブリイ」が、その少し前に停車した。詰めかけた200人以上の報道陣はハイエースに乗り込むと、にらみ身構えていた。ゴーン被告は「この車か?」と周囲に尋ねるようにハイエースを指さしたが、刑務官に促されるように軽ワゴン車の方へ進み、乗り込んだ。

運転手、同乗者全員が作業服に反射帯を着用し、軽ワゴン車の屋根には脚立が積載されていた。軽ワゴンは埼玉の春日部ナンバーで後部窓ガラスには「○○工業」の文字。だが、空色の帽子、作業着に入れられた社名はすべて違っており、入念に準備されていたものとみられる。

10億円という高額な保釈金はこの日、振り込みか、電子納付で納められたとみられる。そのゴーン被告が、まさかの軽ワゴン車。カメラマンらは撮影画像を何度も見直して、軽ワゴン車に乗り込んだ人物が変装したゴーン被告だと確認し、驚きの声を上げた。

日産自動車をV字回復させ、「ルノー・日産、三菱」の3社連合トップに君臨した同被告が、変装した上、日産でもルノーでも三菱でもない他社の軽自動車で塀の外へという奇想天外のシナリオ。関係者によると、弁護団の提案だという。

報道陣のバイクが追尾、上空にはヘリコプターが飛び交う中、車は午後6時すぎ、弁護団の1人で「刑事弁護界のレジェンド」と称される高野隆弁護士の千代田区内の事務所に入った。午後8時15分すぎ、ゴーン被告は黒のトヨタ・アルファードハイブリッドで事務所から出発し都内のホテルに入った。後部座席の被告は黒系ジャケット、白ワイシャツ姿。髪には長期勾留の疲れも感じさせる白いものが交じっていたが、眼光は逮捕前より鋭さを増した印象すらあった。

一貫して無罪を主張しているゴーン被告。弁護人は「体調の回復が必要なため、きょうは記者会見を開かない」とし、後日、検討するとした。塀の外の「ゴーン劇場」の幕が開いた。