12年に1度の「亥(い)年選挙」の初陣となった統一地方選前半戦。自民党は、唯一の与野党対決となった北海道知事選は制したものの、大阪ダブル選で維新に敗れた上、保守分裂となった4知事選のうち、麻生太郎財務相の地元福岡や「竹下・青木王国」の島根で敗北。象徴的な決戦を次々と落とす結果になった。

安倍晋三首相が重視する今夏の参院選を控え、分裂した地方組織の修復に向けた時間はわずかだ。二階俊博幹事長は7日夜、「今後に向けた大いなる反省材料だ。反省の上に一枚岩で取り組みたい」と述べた。

今回、特に自民党内で衝撃が走ったのは、竹下登元首相や引退後も力を持つ「参院のドン」青木幹雄氏の地盤、「竹下・青木王国」の島根の県知事選で敗れたことだ。自民系3人が乱立し、44年ぶりの保守分裂。党は元消防庁次長の大庭誠司氏(59)を推薦したが、多くの自民県議が消防庁室長の丸山達也氏(49)を擁立。竹下氏の弟で、病気療養中の竹下亘県連会長も大庭氏支持を呼びかけたが、竹下派を象徴する「一致結束」には至らず、王国の“崩壊”も懸念されている。

一方、大阪ダブル選では、党調査で一時、市長選で維新をリードしたが、すぐに逆転された。敗戦ムードが漂う中、9日には自民議員の死去に伴う衆院大阪12区補選が告示され、再び維新と激突する。共産党が現職国会議員を無所属で出馬させるなど野党の動きもあり、混戦は必至だ。補選は沖縄3区でも行われるが、米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐる県と政府の対立もあり、自民は厳しい戦いを迫られそうだ。

塚田一郎前国交副大臣による、道路整備をめぐる「忖度(そんたく)」発言も、尾を引いている。野党は合同ヒアリングなどを通じ、道路整備をめぐる首相や麻生氏への忖度が本当になかったのかを、ただす。

12年前の亥年選挙は、参院選惨敗で第1次安倍政権が退陣。亥年選挙は、政変の火種となり得るのだ。【中山知子】