桜田義孝五輪相は10日、都内で開かれた高橋比奈子衆院議員(自民)の会合で「(東日本大震災の)復興以上に大事なのは高橋さんだ」と発言し、引責辞任した。事実上の更迭。桜田氏は昨年10月の就任以来、失言を連発しているが、「辞任ドミノ」を恐れる安倍晋三首相は、続投を容認。問題発言を許し、対応が後手に回った首相の責任は重大で、安倍1強のゆるみも露呈した。復興がらみの失言での大臣辞任は、今村雅弘元復興相に続き2人目。
失言や稚拙な間違いを続けてきた桜田氏が、「一発アウト」の発言で即刻辞任に追い込まれた。岩手出身の高橋氏の会合で東京大会と東日本大震災に触れた際、「世界中の人が日本に来て岩手県にも行く。おもてなしの心で、復興に協力してもらえればありがたい。そして復興以上に大事なのは高橋さんだ」と述べた。
さらに「いよいよ乾杯の時に(私のあいさつが)追加で、がっかりしているのでは。私も『がっかり』という言葉は禁句。いろいろ言われ、こりごりしている」とも述べた。今年2月、女子水泳の池江璃花子が白血病を公表した際に「がっかり」と発言し批判されたが、自虐的な物言いで反省の色も感じられなかった。
桜田氏は会合後、記者に発言を問われたが、「そんなこと言っていない」ととぼける始末。官邸も自民党も「守れない」と即断した。政府も東京都も大会組織委員会も、東京大会=復興五輪の立場。場を盛り上げるつもりでも、復興より議員の方が大事と言うような五輪相は、「言語道断」(自民党関係者)だった。
桜田氏は官邸を訪れ辞表を提出。発言から2時間もたたない、スピード受理だった。「被災者の気持ちを傷つけるような発言で申し訳ない。撤回では十分ではなく、責任を感じ辞表を出した」と述べた。首相は「被災地の皆様に深くおわびしたい。任命責任は内閣総理大臣の私にある」と語った。後任には、鈴木俊一前五輪相を充てる。
首相はこれまで、桜田氏が問題発言しても罷免要求を拒否してきた。しかし桜田氏は9日にも石巻市を「いしまきし」と発言。資質のなさは、明らかだった。
問題大臣の「辞任ドミノ」を警戒してきた首相だが、塚田一郎前国交副大臣が「忖度(そんたく)発言」で辞任直後、桜田氏の辞任。ドミノは動き始め、統一地方選や衆院補選、参院選への影響は重大だ。立憲民主党の枝野幸男代表は「桜田氏をかばい続けた首相の責任」と指摘。想定外の桜田政局だ。【中山知子】
<桜田語録>
◆「レンポウ」(18年11月5、9日) 参院予算委で、立憲民主党の蓮舫参院議員を「レンポウ」と間違えたと指摘されたが、同9日の会見で再び間違えた
◆「自分でパソコンを打つことはない」(同年11月14日) サイバーセキュリティー担当大臣として衆院内閣委で「パソコンは使うか」と問われ「25歳から独立し常に従業員に指示してやっているので自分でパソコンを打つということはない」。USBメモリーを使ったサイバー攻撃の質問に「細かいことはよく分かりませんので専門家に答えさせます」
◆「世界に私の名が知られた」(同21日) 「自分でパソコンを打つことはない」という発言が世界各国で報じられたことに「世界に私の名が知られた。有名になったんではないか」
◆「スマートフォンは使うがパソコンは諦めた」(同22日)スマートフォンは使うかと聞かれ「便利なので1日に何回も使っている」と返答も、パソコンは「教室に行ったが忙しくて自ら覚えるのはやめようと」。官僚が用意した答弁書の読み上げだと批判され「スタッフの協力に基づく答弁書を間違いないよう読むことが最大の仕事」
◆「いしまきし」(4月9日)参院内閣委で、宮城県石巻市の東京五輪・パラリンピック関連イベント欠席の理由を聞かれ「いしまきし」と答弁。2回目はいったん「いしまきし」と言って「いしのまきし」と言い直したが、3回目も間違い