皇后陛下雅子さま(55)にゆかりのある新潟県村上市で、皇后さまのお印(しるし)ハマナスの花の酵母を使ってつくられた日本酒が、注目を浴びている。お印と市の花が同じハマナスという縁で、市内の酒造会社が約2年がかりで完成させた慶祝酒「雪華光(せっかこう)大洋盛」。香りも飲み口も華やかな純米吟醸だ。昨秋から今春までの醸造分は、予約で在庫が「完売」に。皇后さまへの期待は高まるばかりだ。

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「雪華光 大洋盛」は、全国でも珍しいハマナスの花酵母を使った純米吟醸。ピンクを使ったラベルには、ハマナスのイラストや「慶祝」の文字をあしらった。同市の酒造会社、大洋酒造の村山智社長は「花や果物のような華やかな香り。すっきりした甘さでとても飲みやすい」と話す。発売まで3年近くかけたプロジェクトだった。

皇后さまの実家、小和田家は先祖代々、旧村上藩の藩士を務めた名家。同市にあった皇后さまの本籍はご結婚で除籍となったが、同社は原籍の地に近く、ご成婚や愛子さまご誕生の際も慶祝の酒を発売してきた。

今回は、16年8月に上皇さまが生前退位を表明したのを受け、皇后さまにちなんだ新たな祝いの酒を出そうと始動。皇后さまのお印と、市の花が同じハマナスという偶然に注目し、ハマナスの花酵母を使った日本酒の開発にこだわった。

花には、一定の確率で日本酒をつくることができる酵母があるが、分離作業は「宝くじで当たりを引くくらい難しい」(関係者)。村山社長も出身の東京農大を通じて試みたが、難航。そこでハマナスの酵母を使った日本酒を手掛ける「福司酒造」(釧路市)に、酵母を分けてもらえないかと打診。「慶祝のためなら」と快諾を受け、即位に合わせた仕込みに間に合った。

720ミリリットルを約7000本、1・8リットルを約500本瓶詰めし、先月19日に発売したが、事前の報道で全国から問い合わせが殺到。在庫分は完売。新たな仕込みに入るのは今秋以降だ。

1日には市内で慶祝行事が行われ、お祝いムードいっぱいだ。村山社長は、「おいしいものも多く、ぜひ訪れていただきたい」と、皇后さまの訪問に期待を示した。【中山知子】