囲碁の女性棋士で史上3番目に年少の12歳9カ月でプロ入りした上野梨紗初段(12)が20日、都内の日本棋院で第29期竜星戦予選Bで泉谷英雄八段と公式戦デビュー戦を戦い、惜敗した。

勝てば史上3番目の年少記録となる12歳10カ月での勝利だったが、寄せ合いの末、院生時代に学んだ師範だった泉谷八段に屈した。上野初段は「師範の先生だったので、いい碁を打てるよう頑張ろうと思った。うまく対応する手が見つからなかった」と苦笑いした。

ルールは、先番黒6目半コミ出しで、持ち時間は各1時間、5分前から1分の秒読みというもの。先手で黒を打つ泉谷八段が有利のため、白の上野初段には6目半のハンディがついた。上野初段は緊張の面持ちで対局室に入ったが、目を閉じて時折、息を吐いて集中力を高める泉谷八段と対峙(たいじ)すると、気後れすることなく石を打っていった。

対局から2時間が経過した辺りから寄せ勝負となり、激しいせめぎ合いとなった。泉谷八段は「耐えしのぐ時間が多く、中盤から、からみ攻めされた。もっと、しのがれていたら負けていた」と振り返った。

これまでの最年少勝利記録は、藤沢里菜女流本因坊が10年6月10日の棋聖戦予選Cで神田英九段に中押し勝ちした11歳8カ月。趙治勲名誉名人が1968年(昭43)5月8日、大手合で故井口精治二段に中押し勝ちした11歳10カ月が続く。上野初段が勝っていた場合、井山裕太4冠が02年5月15日の大手合で山本賢太郎五段に中押し勝ちした、12歳11カ月を1カ月上回っていた。

4月6日には同所で芝野虎丸七段(19)と記念対局を行い、対局開始から1時間後、102手までで投了し、敗れた。それから1カ月。「勝負どころになった時に、うまく対応できるよう、序盤で悪くならないように」と課題を修整し、進歩した姿を見せた。それでも「時間の使い方が、もっとうまくならないと」と反省の言葉が口をついて出た。

前日の19日には、姉の愛咲美(あさみ)女流棋聖(17)が、福島県会津若松市で行われた第6期会津中央病院・女流立葵(たちあおい)杯の挑戦者決定戦で鈴木歩七段に白番中押し勝ちし、藤沢里菜女流立葵杯への挑戦権を獲得したばかり。上野初段はこの日、姿を見せなかった姉から公式戦デビューにあたりアドバイスはあったか? と聞かれると「特になかったです」と笑った。【村上幸将】