会社法違反(特別背任)などで起訴された日産の前会長カルロス・ゴーン被告(65)の弁護団が28日、都内の日本外国特派員協会で会見を行う予定だったが、急きょキャンセルしたことを受けて報道陣の取材に応じた。

弁護団はこの日、ゴーン被告の保釈条件の中で、キャロル夫人との接触の全面禁止という条件の変更について、東京地裁に3度目の申請をしたものの棄却されたことを明らかにした。その上で、同被告が世論に訴えたいという気持ちから会見を強く望み、リクエストしたため、弁護団が会見を設定したものの、同被告の3人の娘ら関係者が会見を反対したことなどで急きょ、キャンセルしたと説明した。

弁護団の弘中惇一郎弁護士(73)は「私の方から(日本外国特派員協会に)無理を言って夜9時ならセットできると言うのでお願いしましたが、彼の家族などが非常に心配してですね。現時点でそういうことをやると、また何をされるか分からないと」とドタキャンの舞台裏について語った。反対した家族は3人の娘で、キャロル夫人と息子は加わっていないという。

反対する3人の娘が何を懸念しているかについて問われると、弘中弁護士は「また何かとんでもない不利益が起こるのではないか? と恐れている。3月の再逮捕が深い傷になっており、強く反対された」と会社法違反(特別背任)で3月に再逮捕されたことが大きいと説明。その際の、東京地検特捜部の捜査、押収についても不安を訴えているという。

また弘中弁護士は、ゴーン被告は保釈条件について絞って話をしようと希望していたものの、昨年11月に金融商品取引法(金商法)違反で逮捕されて以降、1回も応じていない会見を開いた場合、一連の事件そのものについての質問が出ることも想定されることも懸念したという。「そこに対する準備が十分に出来ていない、ということもあり」(弘中弁護士)その点がキャンセルのもう1つの要因だと語った。

報道陣からは、大阪でG20が初日を迎え、ルノーの筆頭株主であるフランスのマクロン大統領ら海外の首脳が来日している、このタイミングを狙っての会見だったのでは? との質問も飛んだ。弘中弁護士は「G20は、たまたま時期がかぶっているが偶然。話はしていない」と否定した。高野隆弁護士(62)も「裁判所の決定が出たのが今日。ゴーンさんの気持ちを伝えるのが我々の目的。今日、この気持ちを世界中に伝えたいのが彼の真意。それ以上のものは何もない。伝えようと企画したけど、断念した」と重ねて否定した。

今後、会見を行う可能性はあるかと聞かれると、弘中弁護士は「会見したいお気持ちはもちろんあります。近いところでは実際上、難しいかと」と語った。【村上幸将】