来年の東京オリンピック(五輪)のマラソンと競歩の札幌移転案急浮上を受けて、五輪関係者の受け入れを想定した札幌市内の複数のホテルが、競技期間の予約をいったん停止していることが、27日までに分かった。関係者がどれほど来るのか見通しが立たないことが大きな理由。札幌のホテル業界は移転案を歓迎する一方、夏季の観光シーズンに向けて予約が入り始めるこの時期にこうした対応をせざるを得ない状況に戸惑いも見せている。

マラソンは女子が8月2日、男子が同9日、競歩は7月31日、8月7、8日に予定されている。ホテルオークラ札幌、ロイトン札幌は7月25日~8月9日、ANAクラウンプラザホテル札幌は7月30日、8月2~9日と、一部のシティホテルでは一般客の予約受け付けを現段階で中止している。

ホテルオークラ札幌は「関係者がどれほどいらっしゃるか分からないので、一般の予約受け付けをいったん見合わせています」。

ロイトン札幌は、インターネット予約は通常半年前からだが、札幌移転案が報じられるまでは、直接問い合わせがあった場合、予約を受け付けていたが、「報道後、毎日お客様から『予約できますか』などの問い合わせがたくさん寄せられています」という。

市内のホテル関係者によると「今の時期は団体の問い合わせが多い時期で、ホテルにもよりますが、一般予約はあまり受けていない」とした上で「8月上旬はもともと人気シーズン。ホテルによっては、既にこの時期で満室の場合もあり、予約を受け付けていても、高額のケースもあります」と背景を明かした。

北海道にとって夏は最大の観光シーズン。観光庁のホームページによると、昨年の北海道の客室稼働率は平均60・9%で、7、8月は75・8%、77・2%と1年の中でも最も高い。さらにシティホテルに限ると、7月は88・1%、8月は90・3%とほぼ埋まっている状態だった。別のホテル関係者は「夏は本来、一番の稼ぎ時なので、早く決めて欲しい」と困惑していた。

日本ホテル協会北海道支部の担当者は「ホテル業界としてはぜひサポートしたい。札幌だけでなく、道内にも(客足の伸びが)派生してほしい」と移転案を歓迎する。その一方で「関係者がどれくらいいらっしゃるか、規模が分からないので様子を見るしかない。個人のお客様にご迷惑を掛けますが、今は全ての予約を受け入れられる状況ではありません」と複雑な胸中をのぞかせた。