英語民間検定試験の導入が見送られた大学入学共通テスト(2020年度開始)をめぐる問題は5日、国会の場で議論が再開された。衆院文部科学委員会では、参考人質疑が行われた。

実施延期を要望した全国高等学校長協会(全高長)の萩原聡会長は、見送りについて「多くの校長が、これ以上の混乱を防ぐことができたと受け止めていた」と明かした。制度については「何らかの形でできる限り一斉にやれる方向を含めて検討してほしい」と抜本的見直し、「話す」「書く」を加えた英語4技能を公平公正に測れる仕組みを求めた。

実施を求めていた日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長は「大学が本当に4技能を入試で採用する覚悟を決めてもらわないと下も変わらない」「大学がやるしかない」と大学にも注文。「文科省や大学は準備してきた生徒を救済してほしい」とした。

民間試験の1つで、受検生が最も多いとみられる「GTEC(ジーテック)」を運営するベネッセコーポレーションからも、山崎昌樹学校カンパニー長が出席。会場の詳細情報をなかなか発表せずに現場を混乱させていたが、「約350カ所のめどが立っていた」と実施への自信を強調しながらも「地方に行くほど会場がない。最後まで調整が必要だった」と会場確保と運営体制が課題だったと説明した。

全高長が10月21日に開催した緊急シンポジウムに6団体で唯一欠席し、全高長から「説明責任を果たしてほしかった」と指摘されたことについては「10月31日までにいろいろ公表するよう(文科省から)指示があり、準備をしていた。21日の段階で質問をいただいても検討中としか答えられず、受験生に無用な不安混乱を与えてしまうことがマイナスと思った」と釈明した。

国への損害賠償請求の可能性を問われると「まだ検討できていない」とし、現時点での投資額も答えなかった。

もう1つの争点に浮上している国語と数学の一部に導入される記述式問題については、採点をベネッセのグループ会社が受託。50万人分を約1万人が十数日間で採点する見通しで、ここでも公平性公正性が問題になっているが、ベネッセはアルバイトも担当する可能性があることを認めた。

制度の欠陥を指摘してきた京都工芸繊維大の羽藤由美教授は「この制度の実現が困難であることは複数の民間試験を活用することが固まった時点で見えていた。多くの研究者が問題指摘してきたが、耳を傾けてもらえなかった」「民間にとって利潤の追求と試験の質や公平性公正性はあちらを立てればこちらが立たずの関係」「事業者が悪いのではなく、そうせざるを得ない」と話した。

6団体7種の民間試験を比較する仕組みについても、決定に第三者が関与しなかった、致命的誤りと指摘した。その上で「再度同じことが起こらないよう、広く専門家や現場の教員の意見を聞き、結論、ゴールありきではない、現実的、緻密でオープンな議論をしてほしい。今回の騒動に失望した若者たちの信頼を回復できる結論を導いてほしい」と求めた。

一方、萩生田光一文科相はこの日、今後立ち上げる検討会議について「どうしてこういう制度設計になったか、判断に誤りがなかったかも含めてきちんと検証したい」と、これまでの経緯などを検証する考えを強調した。野党は6日の予算委員会でも大学入試問題を追及し、国語・数学の一部に導入される記述式問題の中止なども求める構えだ。