大学入試共通テスト(20年度開始)をめぐり、参院文教科学委員会は19日、参考人質疑を行い、国語と数学の一部に導入予定の記述式問題などについて意見を聞いた。参考人は、全国高校長協会・萩原聡会長、日本私立中学高校連合会・吉田晋会長、福井県立大・木村小夜教授、日大・紅野謙介教授。

記述式問題の今後について「実施、延期、中止」の、どの意見か聞かれると、萩原氏は「どれかは言いにくい。内容、採点など高校生が不安にならないようにしてほしい」、吉田氏は「ここまで進んできた。絶対に実行すべきだと思う」。

木村氏は「個別入試で対応しているので、そもそも不要。問題の質が、記述式で測るべき学力が測れないものになっている。採点や自己採点も公平公正にできない。改善も不可能なので中止すべき」。紅野氏は「数年間かけて、このような問題例しかつくれなかったのは、制度設計にひずみがあったため。なぜ早い段階で止められなかったのか」などと中止を求めた。

木村氏と紅野氏は、記述式の採点体制についても厳しく指摘した。採点業務は、ベネッセグループ傘下の学力評価研究機構が約61億円で落札している。

紅野氏は同社が出した準備状況をめぐる報告の内容に言及。「採点作業中の問題作成委員と採点者の集団の連携方法が、なぜ全く書かれていないのか、不思議でならない。採点基準に当てはまらない解答が必ず出てくる。作成委員に連絡しなければならないが、間接的にしか協議できない。採点者は1万人と推定され、非正規雇用者もいる。この上なく危険」と警告した。

木村氏も「大学の個別入試では作問者は採点全体に責任を持ち、一同に会して採点する。採点者も作問者と同じレベルで出題意図を理解し、出題と採点は一体が大前提。厳格に実施してきた入試と、業者の主張はかけ離れている。入試の厳格さを理解してないのではないか。本当に専門家の知見を入れて制度設計したのか。そんなリスクをおかしてまで、業者を介入させるのはなぜでしょうか」などと指摘した。

また、れいわ新選組の舩後靖彦氏も、記述式問題を含む共通テストの延期を求めた。記述式問題について、視覚障がい者は多くの資料を読み解くのに時間延長が必要だがどうなるか分からないなど、具体的問題点を示した。その上で、大学入試センターが現時点で、配慮の詳細な内容については検討中で、来年に公表するとしているとし「受験生はそこから準備をしなければならず、不安」と対応の遅れを指摘した。

紅野氏は「大規模な入試変更は2年前に発表するルール。障がいある受験生の対応も含まれる。詳細が来年にということは、準備の時間がないことになる。これもこの試験の問題を浮き彫りにしている」などと指摘した。