将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(17)のタイトル初挑戦が夢と消えた。19日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第69期大阪王将杯王将戦挑戦者決定リーグ最終戦で、広瀬章人竜王(32)に敗れた。4勝1敗とトップ同士の直接対決に勝てば挑戦権獲得だったが、星を落とした。藤井のチャンスは、来年春に挑戦者が決まる予定の棋聖戦まで持ち越された。勝った広瀬は、王将戦初挑戦。渡辺明王将(棋王・棋聖=35)との7番勝負第1局は、2020年1月12~13日の2日制で静岡県掛川市で開幕する。

タイトル初挑戦を逃した悔しさをかみしめ、藤井が投了を告げた。広瀬竜王との直接対決。2018年2月、朝日杯決勝で下して公式戦初優勝を果たした相手に、二転三転する混戦の末、今度は屈した。「最後に間違えてしまった。これが実力かな」と、残念そうだった。再度、あと1勝の重みを痛感させられた。今年2月の順位戦C級1組、近藤誠也五段(当時)戦。8連勝で臨み、勝てばB級2組への昇級が近づくはずが敗れ、昇級できなかった。

今回は格下ながら、初の挑決リーグ入りでタイトル争いに加わったのは称賛に値する。藤井を除く在籍6人は、全員がタイトル獲得経験者。しかも、現役の名人か、その挑戦権を争うA級リーグ(藤井のいるC1はA級から3ランク下)の棋士。「現時点での力は示した」。師匠の杉本昌隆八段(51)は成長を認めた。

現在進行中の8大タイトル戦(竜王・名人・叡王・王位・王座・棋王・王将・棋聖)の中で、次にチャンスがあるとすれば棋聖戦。進行具合にもよるが、順当に勝ち進めば、来年春には挑戦権を獲得できる。1989年(平元)、17歳10カ月の史上最年少で第55期棋聖戦の挑戦者となった屋敷伸之現九段の記録を上回る可能性がある。

平成から令和にかけての将棋界は、棋王戦で7連覇中の渡辺を除き、タイトルホルダーの顔触れが毎回変わっている。今年4月、藤井が参加した平成の将棋界を振り返るイベントのトークショーの中で、同席した羽生善治九段(49)は新時代の将棋界を「カオス」と称した。文字通り、混沌(こんとん)とした戦国模様になっている。

今期の1次予選スタートと違い、来期はリーグから登場する。「実力を高めて、来期も1局1局頑張りたい」。新元号になって、藤井は可能性を示してくれた。さらなるパワーアップが見込める。【赤塚辰浩】