野生のイノシシが4日午前、埼玉・富士見市内の畑に出没し、出動した警察官、消防隊員らによって捕獲された。体長1・2メートル、体重約70キロのオスで、再び、人里に現れる恐れや豚コレラ感染の疑いもあり、殺処分された。2日から東京・足立区の荒川河川敷に出没していたイノシシが移動したものとみられるが、富士見市の近隣では1日にも出没情報があり、別の個体である可能性もある。

   ◇   ◇   ◇

野生のイノシシの大捕物だった。4日朝から埼玉・富士見市内の畑にいるところを住民に発見され、通報を受けて午前9時30分すぎに埼玉県警の警察官、消防隊員ら30人以上が急行して取り囲んだ。午前11時すぎに警官が、ヒトの逮捕用の金属棒「さすまた」で追い込み、消防隊員が網で捕獲した。

イノシシは全長1・2メートル、体重約70キロのオスで推定5~6歳の成獣。富士見市役所では自然に戻しても農作物に被害を与え、市街地に現れる可能性があることや、豚コレラ感染などの恐れもあることから検査の血液を採取した上で、捕獲現場で薬殺処分し、市内の環境センターで同日、焼却された。

捕獲されたイノシシは2日、東京・足立区の荒川の河川敷に出没した個体と考えられている。3日午後3時すぎに河川敷を南下し、堀切橋付近に到達したところで出動した警察官らが捕獲網で生け捕りを試みたが失敗。同日午後3時30分ごろに堀切橋付近から荒川を泳いで対岸に逃走、北上した。足立区役所によれば午後8時ごろに堀切橋から約13キロ離れた鹿浜橋付近で確認されたのが最後だった。

鹿浜橋付近から4日の富士見市の捕獲現場まで約25キロ。人目を避け、河川敷に沿って移動した可能性はある。だが、富士見市に隣接する志木市では1日にもイノシシの目撃情報があり、東京・足立区の個体とは別とする見方もある。足立区役所危機管理部は「同一である確認ができないので今後も警戒を続ける」と、イノシシ騒動はまだ続きそうだ。【大上悟】

東武動物公園(埼玉・宮代町)・大西秀弘飼育課長(48) イノシシが20~30キロ移動するのは可能で東京・荒川の個体と同一かも知れません。生後2~3年で成獣となり、捕獲された個体は体格から推定5、6歳とみられます。成獣になると個別で行動することが多い。完全な夜行性ではなく、日中も活発に活動します。意外にも泳ぎは得意で島に渡るなど遠泳能力もあります。野生動物なので人間に対する警戒心は非常に強く、刺激したり追い詰めると突進したり、逃げようとして暴れます。エサ不足の冬場に山から人里に降りて来ることがありますが、発見したら近づいたり、刺激しないように建物の中などに避難するのが賢明です。