新型コロナウイルスによる肺炎で封鎖された中国湖北省武漢市から帰国した邦人191人が宿泊する、千葉県勝浦市の「勝浦ホテル三日月」を励ます声が相次いでいる。昨年10月に台風19号が同県を直撃した際にも、同ホテルを含むグループの3ホテルが、停電、断水の被害に遭った人々に大浴場を無料開放しており、社会貢献への姿勢が評価されている。厚労省は30日、29日に帰国した206人のうち、3人が検査で陽性になったと発表した。

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勝浦ホテル三日月が、武漢から帰国した191人を受け入れたことが報じられると、ツイッター上には「頑張って」「リスペクトしています」などの声が続々と寄せられた。「無料入浴や炊き出しをしてくれた」と台風19号の際の対応に感謝するツイートもあった。

ホテル関係者によると、28日午後に、政府から要請を受けた小高芳宗社長から、帰国した邦人を受け入れる方針が伝えられた。他にも宿泊予約は入っていたが、予約客には政府の要請で危機状況の対応施設になった旨だけ伝え、車で約20分離れた隣の鴨川市の、鴨川スパホテル三日月への振り替え宿泊を依頼した。

191人を受け入れたものの部屋は177室しかなく一部、相部屋になっているが、邦人は風呂とトイレは部屋に備え付けのものを使用し室外には出ていない。食事や飲み物は、ホテル側が弁当と3種類の飲み物、果物を朝、昼、夜と1日3回、各部屋の前に置く配給制を取っており、邦人とホテル職員の接触はない。

医療体制も、地域で可能な限りの体制が敷かれている。車で40分ほど離れた鴨川市の亀田総合病院の看護師がホテルに常駐。同院は感染症科があり、医師は何か問題があれば駆け付けることになっている。

「千葉の誇り」など、称賛される一方で「観光地だから心配」など、風評被害を含めた地元住民から不安そうな声もあるが、同ホテルが受け入れた背景には、小高社長の祖父で17年に亡くなった創業者の芳男会長が掲げた経営理念の1つ「地域貢献」がある。祖父の遺志を継ぐ小高社長は「皆さんが大変な時に助けてあげなければ意味がない。何のためのホテルだ」と職員を鼓舞したという。ホテル関係者は「(称賛の声は)すごくありがたいお言葉です」と感謝した。【村上幸将】

◆ホテル三日月 1961年(昭36)に勝浦市で「勝浦ホテル三日月」創業。当初は10室からのスタートだった。同年、鴨川市に「鴨川スパホテル三日月」を開業。木更津市の「龍宮城スパホテル三日月 龍宮亭」は、舛添要一前東京都知事が会議と称して家族で宿泊したことで話題に。栃木県内でホテル1軒、ゴルフ場とレジャー施設も運営し、ベトナム・ダナンに120億円を投じた複合リゾート計画を進行中。千葉県内で5カ所のメガソーラー発電所も運営。「ゆったり たっぷり の~んびり」で始まるCMソングも人気。