クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客だった香港人の男性(80)が、下船後の香港で新型コロナウイルスの感染が確認された問題で、厚生労働省は3日夜から4日にかけて、横浜市の大黒ふ頭沖に停泊した船内で乗客乗員約3700人に検疫を続けた。

乗船している30代の男性は、検疫は夜を徹して行われた一方で1人当たり1分だったと証言した。

   ◇   ◇   ◇

船内に感染者がいたことが乗客に伝えられたのは、感染した男性が香港で船から下りて9日後の3日だった。船長は館内放送で、男性が1日に陽性と診断されたこと、船内で不調の報告はなく香港到着時の体温検査でも高温は確認されず、同行者の感染も確認されなかったと報告したという。

旅程では、4日午前6時に横浜港に到着予定だったが、3日夜に前倒しで到着。同日午後11時に客室では最上階の14階から検疫が始まった。検疫は1日に途中寄港した那覇でも行っていた。乗客には、検疫は各客室で行うため部屋に戻るよう指示が出たものの、どの階で何時から始まるなどの細かな案内はなされなかったという。

30代の乗客男性は「検疫する時間が公表されていませんでした。起きて、ずっと待機した方もいるかもしれない。ハラハラして待っていたかと思うと心が痛い」と語った。男性が受けた検疫は、1分程度と極めて短時間で終わったという。男性はツイッター上で取材に応じ「検疫は時間ちゃんと計ったけど1分。ノックされてドア開けて問診票渡して耳の体温計でピってやってありがとうございました。でした」「検疫は本当に一瞬でした」と答えた。

船では館内放送で、一部の乗客から採取した検体を、検疫官が陸に持ち帰って分析を行うと説明。船が接岸に向かうことが出来るか否かは分析の結果次第で、当局の指示を待つとした。検体の分析には約5時間かかるという。運営会社は、4日夕方に予定していた出港を5日以降に延期した。

男性によると、トイレは自室のものを使用するよう言われているというが、食事は食堂で行うほか、館内ではフラダンス教室、映画観賞会などイベントも多数行われており、複数の乗客が船内で接触する可能性はある。男性は「イベントではわざわざ消毒しませんし、対策がされているとは言えない。船に乗った瞬間からずっと同じです。コロナ患者が出たからと言って変わったことはない」と状況を説明した。【村上幸将】

<新型肺炎コロナウイルスに感染していた乗客の香港男性の行動>

1月10日=香港から広東省深セン市へ。数時間滞在後に香港に戻った

17日=空路で東京へ

19日=せきが出始める

20日=横浜から乗船

22日=クルーズ船が鹿児島に入港し、14時間停泊。男性は下船し、バスで県内を巡ったとの情報もある

25日=香港で下船

30日=香港で発熱

◆ダイヤモンド・プリンセス 04年就航。船籍は英国。乗客定員2706人。総重量11万5875トン。全長290メートル、全幅37・5メートル。船内には、レストラン、温泉、プール、ジャグジー、フィットネスセンター、ミニゴルフなどができる各種スポーツ施設、スパ、バー、ラウンジ、カジノ、大型シアター、ショッピング施設、ユース&ティーンセンター、メディカルセンター等を完備。ショーやダンスレッスンなども開催されている。

ホームページによると、1月20日~2月4日横浜発着の「初春の東南アジア大航海16日間」の旅では、チャンメイ、ダナンの五行山、世界遺産ハロン湾などベトナム有数の観光スポットがポイントとされていた。食事は朝15回、昼14回、夜15回。このツアーの標準価格は、25万円~138万2000円。バーや温泉などの利用以外は追加料金不要。