ヤクルト、阪神などで監督を務めた野村克也さんが死去した。

 

野村さんは、野球を離れてもさまざまな場で活動。10年1月24日には、その前年に政権を失った自民党の党大会にゲストスピーカーで登場し、講演したこともある。「勝って反省しないところに、落とし穴があった。負けるべくして負けた」と、野党転落の原因を分析。常勝時代の巨人と並べて「おごりがあった」など述べていた。当時のおもなスピーチの内容は以下の通り。

 

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場違いなところに出てきてしまいました。こういう雰囲気のところとはまったく想像もしなかった。大変びっくりしました。大変なところにきた。逃げて帰りたい。そこでまた、何かしゃべれと。二重の苦痛になってしまった。何からお話ししていいかまったく検討つきませんが。

 

昨年は皆さん(衆院選で)、負けたんですよね。私自身も監督として24年、選手として27年、合計54年、経験があるわけだが、やっぱり負ける時は負けるべくして負けるんです。私は常に、勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなしと言い続けていますが、我々勝負の世界もそうですが、私たち負けて反省はするんですが、勝っての反省はあまりしないんです。そこに皆さんの落とし穴があるのではないか。

 

いずれにしても続けるのは大変難しいこと。私も何回か優勝を経験してきたが、続けたのは1回、それも2連覇。ヤクルト時代優勝、4位、優勝、4位というのがありますが、弱い球団ばかりやってきまして、最下位になると私のところにくる(笑い)。南海、ヤクルト、阪神、そして楽天。楽天も田尾さんが率いて始まったが、負けて負けてトップと50ゲームくらい離れて、ダントツの最下位になった。楽天の試合をいろいろテレビで見ていて、女房に言ったんですが「これ、おれんとこに来るぜ」と。そういう予想はよく当たる。案の定、その年の暮れに三木谷オーナーから要請があった。まあそんなことで4年間務めあげたんですが、解任されまして、なんでクビなのか、いまだに分からない。

 

どうしようもないチームをなんとかしてくれと頼んできて、何とかなりそうになったところで、クビというのは納得できない。まあ、ちょうど4年かけてやっと格好ついてきて、これからという時。タイミングがあまりにも悪すぎる。非常に不満を持っているわけでありますが。私の次にきたのはブラウン監督で、彼にどのくらいの実績があるんですか。人の評価というものは本当に分からない。だいたい自分の評価は甘いんだが、監督というのは、やらせてくれといってできるものではなく、人の評価で決まる物。私はひとつ心配している。楽天という名前の由来から考えて、転落しないようこういう心配をしているのでありますが。

 

弱い球団が優勝目指して強くしていくのは、並大抵のことではない。振り返ってみれば、最下位のチームばかり率いてきた。選手個々の改革がいちばん大事。例を挙げると、楽天球団といいますとほとんど、現在は他球団をクビになった選手の寄せ集めで成り立っているチームでありまして。いちばん良い例が山崎。去年は哲平。努力もあって、首位打者になった。山崎も39歳で昨年はホームラン王。こういう例もあるが、ちょっとしたことなんですね。

 

山崎は、彼のプレーをみていると両親からもらった天性だけでやっている。おまえ、野球をどうとらえているかと、野球とはといわれてどう答える、と聞いたが考えたことないという。野球は頭のスポーツとは違うんだ、間の多いスポーツということはしっかり考えて備えろというものを与えられているんではないかと話をした。

 

頭を使え、技術は限界がある、その先は、これがプロの世界。状況をよくみろ、目と頭でこれから考えろという話をして、神妙に聞いていた。その後「今までこんなに考えて野球をやったことがない」というから、おまえ、40にもなってそんなこというな、恥ずかしいぞと言った。哲平は中途半端な選手。強打者でも単打者でもない。「おまえはどっちかに割り切れと」言った。

 

人間、ちょっとしたことで考え方が取りくみになる。考えのエキスを注入するのが我々の仕事。監督業は気付かせ屋ではないかと。そういう思いです。今年の楽天がどう変わるのか、お手並み拝見というところ。

 

私は弱いチームばかりやってきましたから、恐らく皆さんは巨人の心境でおられたんだと思う。上に立てば足を引っ張る人がいる。みんなが結束して、引きずり下ろしに巨人を目指して足を引っ張りに来る人がいる。みんなが結束して、足を引っ張りに来ることを忘れず、頑張ってください。

 

(講演後の報道陣との一問一答)

-負けるべくして負けたと

野村さん 戦いに敗れたわけですから、負けに不思議の負けなしと、失礼なことを言ったが、会場は沸いていましたが。敗因は皆さんも真剣に取り組んでおられると思うから、やっぱりしっかり練り直し、立て直しで復活していくと意気込みの大会だったという感じはした。

-自民党には何が必要か

野村さん 政治の世界はまったく分からないが、やっぱり負けるべくして負けたんだろうと思う。野球で例えれば、巨人が黄金時代を築いていた時に全球団が打倒巨人に結束して倒そうと、団結して巨人が天下をとっていたのがおかしくなって、また立ち直ってきましたけどね、まあそういうことだと思う。結構巨人と自民党というのはつながるのではないかと、ちょっとおごりがあったのではないかという思いはする。はたから見ると。負けて反省、勝手反省、常識的にやらないんですよね。だから、自民党とすれば国民にいい、おきゅうをすえられたととらえて、もう1度立ち直ってもらえればいいと思うんですが。

-支持率を上げるにはどうしたらいいか。トップのやることは

野村さん 野球とどうつながるか分からないが、われわれは負けた場合は当然敗因があるわけで。敗因をしっかり思い起こして、そこからしっかりやること。弱いチームが強いチームを倒す時には、まともに行ったら勝てやしない。相手の弱点を、スコアラーを中心に、具体的に見つけて徹底的に攻めるというのが弱者の戦術の基本。

-どう守る

全員野球か、守るべきか。基本的に、政治の世界を戦いととらえるなら、守りを固めてから攻めるのが理想的。敗因もその変にあったと思う。臆測ですが。やっぱり、守りが甘かったのではないか。

-ルーキーの育て方

野村さん 野球は親子2代名選手はいない。不思議なことにメジャーではいるんです。それがアメリカの日本の遺伝子の問題か知らないが。解明できてない。血統的は申し分ないわけで、(司会を担当した小泉進次郎氏について)ちょこっと司会進行みたいなことで壇上に上がってましたが、さすがしっかりしているし、しゃべりも上手ですしいいんじゃないですか。