病気、災害、自殺などで親を亡くした子どもの進学を支えるため、1970年(昭45)に始まった「あしなが学生募金」が26日、会見を開き、4月に第100回を迎えるはずだった街頭募金を、新型コロナウイルス感染拡大を受けて中止すると発表した。

参加する遺児奨学生やボランティアへのコロナウイルス感染や拡散の恐れを考慮してのもので、街頭募金の中止は史上初めて。あしなが育英会は、今春の街頭募金中止により不足する資金を、40億円と想定している。

あしなが学生募金の第1回から街頭に立つ、玉井義臣会長(85)は「100回の歴史の中で街頭募金の街頭に立てなくなりました」と苦渋の表情を浮かべた。あしなが学生募金は、毎年春秋に各4日間、全国の主要駅前など約200カ所で行い、参加者は毎年延べ約1万人、年間では同2万人に達している。今回は100回目を記念して、募金を全国298カ所に拡大し、通常の倍の延べ2万人の奨学生ボランティアが参加する予定だった。

あしなが学生募金を資金基盤とする「あしなが奨学金」は、18年度に返還不要の給付型を新設したことで利用者が急増しており、19年度は高校、専門学校、大学、大学院合わせて6551人、奨学金交付総額は48億2000万円に上った。20年度の申請者はさらに増加する見込みで、総額は60億円を見込んでいた。

あしなが学生募金事務局の岡本蓮事務局長(大手前大)は「中止を正式に決定したのは昨日(25日)です。準備を約半年間かけて進めて参りました。不足する資金は40億円と言われる。街頭の方に呼び掛ける機会が1回、なくなったことは大きなこと」と現状を説明した。その上で「僕はお父さんを5年生に突然死で亡くした遺児の1人。周囲は苦しい家庭状況を理解してくれない。どうにかして今ある現状を変えたい、社会の人に届けたいという思いで活動している。1番、社会に対してインパクトを与えられるタイミングで中止。悔しいです」と思いを語った。

玉井会長は「学生募金が2~2億5000万円。その10倍くらいの寄付が集まる。学生が街頭募金に立つことが伝えられ、募金が集まる形」と、街頭募金のPRで多くの寄付が集まるという仕組みを説明した。その上で「いわば、風物詩のように街頭に立っていた。忘れてしまわれる恐れがあるのが1番、心配」と今後を懸念した。【村上幸将】