新型コロナウイルス感染拡大をめぐる安倍政権の後手後手対応が26日、明白になった。今後2週間、大規模イベントの中止や延期、規模縮小を要請すると発表したが、25日発表の基本方針には盛り込まれず、主催者への「判断丸投げ」に批判が出ていた。ウイルス感染検査の実施についても、1日当たりで可能としてきた数字にほど遠い現実が露呈。この日も全国で新たな感染者が明らかになり、死者も確認された。

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政府発表の基本方針が、一夜で更新された。当初、イベントについて「全国一律の自粛要請を行うものではない」としながらも判断基準があいまいで、主催者に丸投げするようにも受け取れ、批判が出ていた。

首相は26日、大勢の人が集まるイベントに関し「今後2週間は中止や延期、規模縮小の対応を要請する」と表明。これを受けて、多くのイベントで中止や延期が決まったが、25日に動いた主催者もおり、政府発表の後付け感は否めない。

新型コロナウイルス対策で政府の対応は、後手後手が続く。野党は26日の衆院予算委員会で「危機感がない」と、批判を強めた。

「過去に経験のない事態。私も同様の経験をした」。立憲民主党の枝野幸男代表は、民主党政権の官房長官として東日本大震災と原発事故に対応した経験を振り返り「全力で当たっていると思いたいが、ここまでの問題は厳しく指摘せざるを得ない」と指摘した。

特に遅れが指摘されるのがウイルス検査。検査を受けたくても受けられないという国民の声が増えている。政府は1日に最大で約3800件が可能としているが、加藤勝信厚労相は、今月18日~24日の1週間に実施したのは、6300件と明かした。1日平均900件で目標を大きく下回る。加藤氏は「調査し、できる環境をつくりたい」と述べ「能力には限界がある」と口にする場面もあった。

これまで、節目で自ら発信してきた首相の指導力が見えないとの指摘も出た。国民民主党の玉木雄一郎代表は「『総理』という言葉は、すべてを管理するという意味。厚労省の仕事としか見ていない。総理は、総理をしているのか」の指摘に、首相は「パフォーマンスをしても仕方ない。結果を出す」と、突っぱねた。

首相の鈍い対応には「責任の矢面に立ちたくないからでは」(関係者)との臆測まで漏れる。東京五輪・パラリンピックの機運醸成にも水を差す感染拡大の収束へ、国民が納得できるような強い指導力はまだ見えてこない。【中山知子】