東日本大震災の発生直後、岩手県大槌町の避難所で出会ってから9年。3歳の保育園児だった小松倫子ちゃんは、セーラー服姿がまぶしい12歳の少女になっていた。

小中一貫校の大槌学園で、4月から7年生(中1に相当)に進級する。初めての制服に袖を通し、さらに勉強やスポーツに励むことになる。「図工と算数、理科が好き。将来の夢は科学者になることです」。

3歳から習っているピアノの腕を生かして「大人になったらピアニストになりたい」と言っていたのは昔の話。今は学究の道1本にしぼっていた。昨年12月、図工の時間に「将来の夢」をテーマに作製した粘土細工は科学者が研究をする姿。顕微鏡やビーカーに囲まれて研究に打ち込むのは自分自身だといい、夢に向かう熱い思いが自然と伝わってくる。

夢をかなえるための体力づくりにも怠りがない。7歳で始めた空手は昨年11月に黒帯の初段補に昇段した。週に2回の道場通いを欠かさずに「空手を得意とする科学者」を目指している。今年になってから0・5キログラムのダンベルを使っての自宅トレーニングも導入。「突きが早くなってスピードも維持ができるようになってきた」と確かな手応えを口にした。

「実際に見せてもらえますか」のリクエストに応えて、道着に着替えてくれた。「いつかは全国大会に出場したい」と高い志を持つだけに、道着を着ると身も心も引き締まるようだ。カメラを向けて「笑顔を見せて」と呼び掛けてもキリッとした表情を崩さない。“戦う野武士”然とした風格さえ感じさせる。

「まっすぐに、人の道に外れないように育ってほしい」と願って「倫子」と名付けた母の広子さん(40)。愛娘の成長について「スクスクと育ってくれています。勉強も空手も諦めることなくやり抜いて欲しい。望むのはそれだけ。『やり抜く力』が大切だと思います」。

洋服などの買い物に、最近は2人で行くことが多いという仲良し親子。「日本でたくさんの知識を学んで、その後で海外に出て技術を身に付けたい。そして病原体についての研究をするんだ」。世界的な活躍を夢見る愛娘に、広子さんは「えっ、大槌から出て行っちゃうの? 一緒にいようよ~」。半分本気!?になって笑顔でアピールをしていた。