新型コロナウイルスの影響で医療現場の防護服が不足する大阪市に全国の個人や企業から雨がっぱが送られてきている。同市の松井一郎市長の提供呼びかけにユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をはじめ、ホームセンターを展開するコーナンなどの企業も大量の寄付を行った。市の担当者によると合計で10万枚を超えるという。全国からの支援の輪が大阪の医療現場の危機を救う。

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松井市長からのSOSに日本中が応えた。USJは普段販売しているレインポンチョを提供する。USJ広報によれば、松井市長の呼びかけ後、市民からUSJが協力するように多数の声が届いた。「感染拡大を阻止するために役立てるような活動をしていきたい」。市民に背中を押される形で無償提供を決めた。

ポンチョという性質上、医療用としての使いやすさは未知数だが、大阪市も受け入れる姿勢だという。枚数は非公表だが、市との調整が進めば順次提供をスタートする。USJは2月29日以降休業しているが、今後について「活動を自粛しつつも、どういう社会貢献ができるか考えていきたい」と話した。

ホームセンターのコーナンも大阪府の吉村洋文知事(44)からの支援要請に「お役に立てることがあれば」と立ち上がった。レインコート4080着を提供。着脱のしやすさが特徴で、医療現場での使用が期待される。

また、ブランドの雨具を扱うワールドパーティーは、1着4000~5000円程度のレインジャケットなどを2300着提供。商品を卸している首都圏の店舗は休業中。流通が止まるなど4月は通常に比べ売り上げが8割減という事情もある。

中村俊也CEOは「こういう事態で知らんぷりはできない。世の中のニーズに応えていきたい。コロナが終息すれば経済も回る」。ファッションブランドのため病院での使用には適さないが、市との相談で軽症者が滞在するホテルのスタッフは使用できると考えた。「商品は使い捨てではないが、使い捨てでも使ってもらいたい」との心意気も見せた。

市庁舎には全国各地から雨がっぱが届けられ、市担当者によれば、現在までに10万枚を超えるという。札幌や岩手など遠方からの問い合わせもある。大切な命を守りたい。未曽有の危機が広がる中で日本全国が絆で結ばれた。【南谷竜則】