コロナ禍で外出制限やテレワークの日々を送るなど、苦難の日々が続いています。プロ野球やJリーグなど各種スポーツ、芸能イベントも開催できない状況です。日刊スポーツでは心温まる、ホッとひと息つける「ホッコリ ニッカン」面を新設しました。「日本の色」と題して、鮮やかな写真とともにお届けします。

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長野県塩尻市の奈良井宿を訪れると、黒褐色の格子がはめられた風情のある建物が軒を連ねている。江戸時代の日本橋から京都の三条大橋を結ぶ旧中山道木曽路十一宿の北から2番目の宿場町だ。奈良井川沿いに南北約1キロ、東西200メートルと街道最長の宿場町で、かつては行き交う旅人であふれた。

通りを歩いていると格子を塗り替えている滝沢隆志さん(42)一家と出会った。「薄くなってきたので10年ぶりくらいに塗り替えています。色は決めているわけではないのですが、地域の方々で似た色にしています。真っ黒じゃなく木目の残る塗料を使っています」。

滝沢さんは宿場町で木曽名物の手打ちそばなどを提供する飲食店「こころ音」を経営している。感染拡大の影響で観光客が激減している。「いつもは業者にお願いしているのですが休業中で時間が空いたので。休校中の子供も手伝っています。春になり3月の連休から5月の大型連休まで桜を見に、6月には奈良井宿場祭りがあり、かきこみ時なんです」と胸の内を明かしてくれた。苦しい時期も母親と息子の3世代で格子を塗り替える姿に心が和む。伝統の色が受け継がれていく。【滝沢徹郎】

<撮影データ>4月16日午後2時23分撮影 ニコン「D5」 24-70ミリズーム (焦点距離28ミリ) ISO感度400 シャッタースピード500分の1 絞り5.6