コロナ禍で外出制限やテレワークの日々を送るなど、苦難の日々が続いています。プロ野球やJリーグなど各種スポーツ、芸能イベントも開催できない状況です。日刊スポーツでは心温まる、ホッとひと息つける「ホッコリ ニッカン」面を新設しました。「日本の色」と題して、鮮やかな写真とともにお届けします。

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神奈川県箱根町の仙石原は小雨交じりの雲に覆われていた。穂の落ちかけた薄茶色のすすきが斜面を覆っている。例年ならばこの時期、すすきはない。山焼きが行われ真っ黒な大地となる。樹木の侵入と害虫を防ぎ観光名所の美しいすすき草原を守るためだ。しかし今年は新型コロナウイルスの影響で山焼きは中止となった。

散歩していた藤岡素子さん(47)に出会った。新型コロナウイルスの感染を恐れて東京の自宅から箱根の別宅へ家族と避難してきたという。すすきは車から眺めたことはあるが、実際に足を運んだのは初めてだそうだ。「秋のすすきはもちろんきれいだが春もきれい」と頬をゆるめる。

周辺は限られた店しかなく、買い物に苦労するという。ネット通販も物によっては届かない。藤岡さんは「東京のスーパーは人との距離が近くて不安になる。こっちは人が少ないから安心」と話す。5月になっても子供の学校が再開できるか心配するが「ここでの生活を楽しむしかない」と前を向いた。雲の間から光が差し込んだ。すすきが黄金色に輝きだした。【滝沢徹郎】

<撮影データ>4月10日午後2時11分撮影 ニコン「D5」 70-200ミリズーム(焦点距離200ミリ)ISO感度1600 シャッタースピード2000分の1 絞り2.8