今年予定された東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを見据えて、あらかじめ開催時期を繰り上げていた首都圏の花火大会が、コロナ禍で次々と中止に追い込まれている。全国320の花火業者が加盟する日本煙火協会では「休業するところも出てきた」(河野晴行専務理事)と、苦慮している。

東京大会で警備の手配がつかなくなると想定し、例年7~8月に開かれていた花火大会の多くは今年、5月初め~7月上旬に日程を変更した。このため、花火業者は「いつもは春からスタートするが、例年より3カ月早めて、正月から準備を進めていた」という。新型コロナウイルスのニュースに、当初は「会場での検温などやらなければいけない対策が増えるとは思っていたが、ここまでまん延し、中止に追い込まれるとは思っていなかった」と、都内の花火業者は明かす。

花火自体は長期保管でき、来年以降も使うことはできる。河野専務理事は「花火は打ち上げないと在庫になる。作るだけ作ったら、職人の仕事がなくなり、技術的にも停滞してしまう」と話す。五輪で日程変更したものの中止を決定していないのは、7月開催を秋にした「立川まつり国営昭和記念講演花火大会」(10月3日)「葛飾納涼花火大会」(10月10日)「浦安市花火大会」(11月7日)と、10月24日に再変更した「江戸川区花火大会・市川市民納涼花火大会」(共同開催)程度になっている。

江戸川区花火大会実行委員会事務局では「コロナで暗い世の中を少しでも明るくする可能性を探りたいが、ねぶた祭など8月のイベントまで中止ラインは進んできている」と苦悩する。河野専務理事は「花火は人の心の癒やしが目的。『悪疫退散』の意味も込めて江戸期から行われてきた。それができないのが歯がゆい」と、話す。

花火業者の間では「コロナに打ち勝つ」願いを込めて、合同で花火を打ち上げる話も出ている。感染リスクを高めないよう方法を模索中だ。  【中嶋文明】