コロナ禍で外出制限やテレワークの日々を送るなど、苦難の日々が続いています。プロ野球やJリーグなど各種スポーツ、芸能イベントも開催できない状況です。日刊スポーツでは心温まる、ホッとひと息つける「ホッコリ ニッカン」面を新設しました。「日本の色」と題して、鮮やかな写真とともにお届けします。

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新月間近の富山県富山市にある八重津浜海水浴場は真っ暗で、ライトなしでは歩けない。ホタルイカを狙う人たちが波打ち際でヘッドライトを装着し、網を片手に練り歩いている。時折押し寄せる強めの波にホタルイカが、ボワッと青く発光する。浜辺に打ち上げられ触手をばたつかせるも、やがて消えてしまう。「ホタルイカの身投げ」と呼ばれるこの光景は、刹那的で美しい命の灯火だ。

3月から5月の深夜にかけて深海から陸近くまで上がってくるのは、産卵のためと考えられている。新月前後の好天、満潮時に見られるという説もある。大群で押し寄せる姿を「爆湧(ばくわ)き」と呼ぶ人もおり、旬の味を求め多くの人が集まる。ある地元の女性は、釜揚げし、からしみそにつけて食べるのが一番と言う。

「爆湧き」した身投げを見ることはできなかったが、たとえ数匹でも美しかった。消えていく青い光を見つめていると生命のはかなさを感じる。その光景を思い出しながら、からしみそ添えのホタルイカの軍艦巻きを頬張った。濃厚なホタルイカの風味が口いっぱいに広がる。いつか「爆湧き」を見てみたい。その後の「爆食い」も、楽しみだ。【滝沢徹郎】

<撮影データ>4月24日午前1時27分撮影 ニコン「D5」 24-70ミリズーム(焦点距離24ミリ) ISO感度1600 シャッタースピード10秒 絞り4