将棋の最年少タイトル挑戦者、藤井聡太七段(17)が20日、大阪市の関西将棋会館で指された第33期竜王戦3組ランキング戦決勝で師匠の杉本昌隆八段(51)を破り、史上初の「4期連続優勝」の新記録を達成した。

弟子入りから7年、前回に続き2度目の師弟対決を制し、成長ぶりを示す「恩返し」を果たした。

終局後、藤井は師弟戦に「こういう決勝の大舞台で対局できるのを非常に楽しみにしていた。一手一手をしっかり指すことができた」と振り返った。

関西将棋会館で最もグレードの高い「御上段(おんじょうだん)の間」。午前10時、師弟戦がスタート。先手の藤井がいつものようにお茶を一口飲み、初手を指した。一方の杉本は棋士が重要な対局の時に身を包む和装姿で臨んだ。杉本は時折、口をへの字に曲げ、気合の入った表情を見せた。

2人とも決勝進出した時点で2組への昇級を決めているが、決勝トーナメントに進出できるのは勝者のみ。1枚の切符をめぐる、まさに大一番。杉本が選んだ戦型は得意の四間(しけん)飛車。全力で負かしに来た師匠を相手に藤井は、時間を使い、丹念に手を読んだ。「盤上では対等であり、ライバル」。勝負師としての教えを忠実に守った。中盤まで一進一退の攻防が続く。終盤に入ると、際どい攻め合いになり、藤井が厳しい手を連発し、投了に追い込んだ。

和装の勝負服で臨んだ杉本は「最高の舞台で藤井七段といい将棋を指したかった。私にとっては実質、タイトル戦に近い対局だった」と話した。

藤井はこれで竜王戦ランキング戦は負けなしの20連勝。デビュー1年目の17年に最下級の6組を制すると、18年に5組、19年に4組で優勝して昇級。師匠を破り、史上初の「4組連続優勝」の新記録を達成し、挑戦者を決める決勝トーナメントに進んだ。

藤井は棋聖戦で最年少タイトル挑戦者となり、第1局で勝利。棋聖戦とのダブルタイトル挑戦をかけて23日には、永瀬拓矢2冠(27)と王位戦挑戦者決定戦を戦う。

◆竜王戦 将棋の8大タイトル戦の1つ(ほかは名人・叡王・王位・王座・棋王・王将・棋聖)。今期は全ての現役棋士のほか、女流棋士4人、奨励会三段1人、アマチュア6人が出場。予選はランクに応じて1~6組まで分けられる。豊島竜王への挑戦権をかけた決勝トーナメントに出場できるのは1組5人、2組2人、3、4、5、6組は各組優勝者の計11人。トーナメントの組み合わせもランク上位棋士ほど優遇される。優勝賞金は将棋界最高の4400万円。