梅雨前線の影響で大雨特別警報が発表された熊本県南部で4日、県内を流れる球磨(くま)川が人吉市から八代市にかけ少なくとも7カ所で氾濫し、大規模な浸水被害に見舞われた。芦北町で女性1人が死亡。浸水などで15人が心肺停止、9人が行方不明で、1人が重体。複数の自治体で住民が孤立した。山間部を中心に救助が届かない地域が出ており、被害の全体像は分かっていない。

避難所では新型コロナウイルスの感染防止対策も課題となっている。猛烈な雨に見舞われた熊本、鹿児島両県にある各市町村は、住民に避難指示を出し、各所で避難所が開設された。住民はごう音とともに急流が襲う様子を目の当たりにし、サイレンが響く中、避難所などへ急いだ。各自治体では「密」を避ける対応も迫られた。

熊本県水俣市では、避難者同士の間隔を最低限2メートルは保とうと、避難所内での定員を半分に減らした。避難所の入り口では検温を実施、発熱などがあった場合は、パーテーションで仕切った別の場所に案内するように対策を練った。

同時に、市民に向けては、避難先を避難所だけに限定せず、安全だと判断されれば知人や親戚の家などへの避難も勧めた。同市の担当者は、昨年9月の台風接近時と比べ、避難者は半分ほどだとし「コロナを気にして来られない方もいると思うが、まだ(大雨には)気が抜けない」と話した。

バーでクラスターが発生し、3日には30人の感染が確認された鹿児島市でも、避難所入り口で検温などの健康チェックを実施するなど、感染対策が厳重になされた。体調に異変を感じた人には、医療機関の受診を勧める方針をたてた。

避難所は市内に101カ所開設された。現状、1カ所に大勢が集まることはなく、「密」になることはないという。同市では大雨警報の解除までは避難所の開設を続ける。【南谷竜則】