東京・池袋の都道で19年4月19日に乗用車が暴走し、松永真菜さん(31)と長女莉子ちゃん(3)が死亡した事故を追悼する慰霊碑が、豊島区東池袋の日出町第二公園に建立、設置されて11日、除幕式が行われた。

当初は事故から丸1年の4月19日に式が行われる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府の緊急事態宣言下で、延期となっていた。

遺族の松永拓也さん(33)や区の関係者がデザインに関わった慰霊碑は、球体で普遍的な日常を表し、頂点のくぼみは事故をイメージしている。くぼみに雨が降ると水がたまり、流れ落ちる仕組みになっており、悲しみの涙、そして地面に流れ落ちた雨粒を交通事故ゼロの未来に向かう希望の芽をイメージしたものだという。

設置されたのは、事故が発生した交差点が見える場所にあり、かつてはベンチがあり、松永さんはそこに座り、最愛の妻子を失った悲しみをかみしめ、今後どのように生きていこうかと思案を繰り返した場所だという。豊島区は建立にあたり、全国から募金を集め、1140万9496円の寄付が集まった。

松永さんは式後、取材に応じ「こんなに素晴らしい慰霊碑になった。見た方に交通事故のない安全、安心な社会にするのだと思って欲しい。2人をはじめとした、事故で亡くなられたたくさんの方の追悼、交通事故の根絶という思いを込めました。私が思っている全てを込めた慰霊碑です」と語った。亡くなった妻子は、どう思って見詰めていると考えているか? と聞かれると「2人の声が聞こえるなら、本当は一番うれしい。あくまで私のエゴかも知れませんが、天国から見て、皆様に感謝し、私と同じように自分たちと同じような思いをして欲しくないと思っていると思います」と、かみしめるように口にした。

松永さんは、関東交通犯罪遺族の会(あいの会)の一員として、交通事故防止のための啓蒙活動や官公庁、行政への働き掛け、提言を行っている。慰霊碑という活動を象徴するものが出来上がり、今後どう活動していくかと聞かれると「私が1つ1つ、やることによって1件でも事故を減らせるという思いが根底にある。コロナ禍後、子供の事故が多いと聞き、心を痛めています。社会情勢によって、やることが多少、変化することはあっても、やるべきことを愚直に続けていきたい」と切々と訴えた。

◆池袋暴走事故 19年4月19日午後0時25分ごろ、東京都豊島区東池袋4丁目の都道で、乗用車が交差点2つを含む約150メートルにわたって暴走し、赤信号を無視して横断歩道に突っ込んだ。自転車に乗っていた松永さん母子が死亡し、運転していた飯塚元院長と助手席の妻を含め2歳から90代の男女9人が重軽傷を負った。