学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さん(当時54)が、佐川宣寿元国税庁長官(62)の指示で決裁文書改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、妻雅子さん(49)が国と佐川氏に計約1億1000万円の損害賠償を求めた裁判の第1回口頭弁論が15日、大阪地裁で開かれた。雅子さんは法廷で約10分間にわたり、意見陳述を行った。国と佐川氏側はいずれも請求棄却を求めた。

証言台に立った雅子さんが、おえつを漏らした。俊夫さんが亡くなった18年3月7日を振り返ったときだった。「夫は亡くなった日の朝、『ありがとう』って言ってくれた。最期の夫の顔は絶望に満ちあふれ、泣いているように見えた。決して生き残らないように電気コードは首にきつく、二重にくくりつけていた。怖がりだった夫がこんなことをしなければならないなんて…。真面目に働いていた職場で何があったのか。何をさせられたのか、私は知りたい」と訴えた。

自らの実名を明かして裁判に臨むことを決めた。弁論後の会見で、雅子さんは真相解明に後ろ向きな国を批判し「1人でも多くの方に、こういうことが今住んでいる日本で実際にあることなんだということを知っていただきたいと思います」と話した。俊夫さんの口癖は「僕の契約相手は国民です」。実直な公務員だった夫が、なぜ自ら命を絶ったのか。「夫の死の真実を知りたい」。妻の闘いが始まった。【松浦隆司】