コロナ禍に翻弄(ほんろう)される「勝浦ホテル三日月」(千葉・勝浦市)が特別な夏を迎えている。

政府の観光支援事業「Go To トラベル」から集客の柱である東京都が除外され、首都圏の学校の夏休みが短縮される中の短期決戦だ。1月に中国・武漢市から帰国した邦人を受け入れて休業。3月再開も4月の緊急事態宣言で再休業し、7月に再々スタートを切ったが、厳しい夏に直面している。

   ◇   ◇   ◇

あの勝浦ホテル三日月が「特別な夏」にあえいでいる。お盆の週末14日から16日「ほぼ満室」(同ホテル)となったが、満室には至らなかった。前週8日から10日の3連休も同様で「週末以外は、昨年と比べようがない」と同ホテル企画室は説明する。

千葉・南房総という立地から東京都を中心とした親子連れ、3世代のファミリー層がメインだ。だが、7月17日に政府の観光割引「Go To トラベル」からの東京除外が発表された。1人あたり最大1泊2万円がクーポンで割引されるだけに家族連れの懐には痛手でブレーキとなりそうだ。

さらに緊急事態宣言などによる授業の遅れを取り戻すため、1学期の終業式が8月にずれ込んだ学校も多く、8~10日が、実質夏休み最初の週末となった。今週中に2学期の始業式という学校もある。「通常は夏休みを40日間と設定していますが、今年は実質2~3週間。短期決戦です」と同ホテル企画室では危機感をあらわにする。

1月の休業から3月の再開時には風評被害にさらされたが、7月の再々オープン後に「ようやく風評も落ち着いてきたところ」(同ホテル企画室)。ホテルでは風評一掃のための新たな取り組みも行っている。

金無垢(むく)(18金)の黄金風呂もある人気の展望大浴場は、脱衣所の利用を約半分にするなど人数を制限している。食事のバイキング大会場は入場時間をずらし、料理は基本、最初から小皿に盛られたものを各自が取る方式に変えた。取り分ける料理のトングは共用ではなく1人1本。新たに各自の部屋で懐石弁当などを利用する「部屋食プラン」も用意した。感染リスクを避けるために従来、三日月の看板でもあった大勢がにぎわう「密な」スタイルから脱却しようとしている。

しかし、新方式の導入で人件費などのコスト増や効率悪化は避けられない。今後も平日の集客難は続く見込みで同ホテルでは「1日も早い感染収束と、Go To トラベルの東京除外の解除を願っています」と特別な夏の終わりを祈っている。【大上悟】

◆勝浦ホテル三日月(みかづき) 新型コロナウイルス感染が拡大した中国・武漢市から政府チャーター機で帰国した邦人を受け入れて、1月29日から2月13日まで休業した。受け入れ終了後の2月15日~29日まで全館消毒、清掃作業を実施した。帰国者の患者などを受け入れた亀田総合病院(千葉・鴨川市)の感染症専門医の監修によるガイドラインを基に約120人の従業員が指導、研修を受けた。ホテル玄関に客の体温を検知するサーモグラフィーを設置、従業員はフェースシールド、マスクの着用、各自が消毒液を携帯するなどの対策を実施して3月1日から営業を再開した。4月7日の緊急事態宣言の発令に伴い、再休業となった。7月3日から再々、スタートで営業を開始した。