英王室のエリザベス女王が15日、新型コロナウイルスによるパンデミックが始まって以来およそ7カ月ぶりに公務で公の場に登場したもののマスクを着用していなかったことに批判の声が相次いでいる。

英国では感染が再拡大しており、感染者が急増する北部を中心とした地域では再びパブが閉鎖されるなど厳しい外出制限が実施される中、94歳のエリザベス女王は孫のウィリアム王子とともに南西部ポートンダウンにある国防科学技術研究所に新設されたエネルギー分析センターのオープニングセレモニーに出席。

感染予防対策としてソーシャルディスタンスは保たれているものの、ウィリアム王子や周囲のスタッフ、研究所の職員48人全員がマスクを着用しておらず、英国を含む欧州で再び感染が拡大する中で「国民に対する悪い手本だ」「マスク嫌いで知られるトランプ米大統領から何を学んだのか」と批判を浴びている。

英政府は屋内で他人と社会的距離を保つのが難しいと思われる場合や日常的に会わない人に近づく際にはマスクなどで鼻と口を覆うことを推奨しているが、王室の発表によると女王は自身の医師や施設の科学者らの助言を受けた上でマスクを着用しないことを決めたという。

報道によると、エリザベス女王とウィリアム王子に接見する人は全員が事前の検査で陰性が確認されており、万全のコロナ対策を行っていたと王室は説明しているが、英王室では女王の息子であるチャールズ皇太子が3月に新型コロナウイルスに感染しているだけに、今回の対応は十分ではなかったと指摘する声もある。

3月からフィリップ殿下と共にウィンザー城で自主隔離生活に入っていた女王は、ウィンザー城で行われた孫のベアトリス女王の結婚式に出席するなど何度か外出はしているが、城外に姿を見せたのはこれが初めてだった。

再びロックダウンの危機に直面する中で国民への手本としてマスク着用をすべきだったとの声に今後どう応じるのか注目される。(ロサンゼルス=千歳香奈子)