公共交通機関の迅速対応が、受験生らを救った。福島、宮城両県で最大震度6強を観測した地震で、東北新幹線が一部運転を見合わせる中、日本航空(JAL)は15日、羽田~仙台間3往復など定期便のない路線を含めた臨時便を運航。全日空(ANA)も臨時便で需要に応えた。

宮城県大崎市から、臨時便で都内の大学受験に来た男子高校生は、感謝の気持ちを持つとともに、ドタバタで揺らいだ心を立て直し、合格を誓った。

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仙台~羽田間で臨時運航されたJAL4724便。古川黎明(れいめい)高3年の男子生徒は、制服姿で羽田空港の到着口を出ると決意を新たにした。「地震がすごくてビックリしたし、東北新幹線が10日くらい動かないと知って、どうしようと思った。正直、不安でした。でも臨時便で東京に来られてホッとした。あとは受験に集中して頑張るだけ」。コロナ禍で混乱が続く“受験世代”に、またも襲った試練。「絶対に合格します」。力強い言葉で胸を張り、笑った。

自宅がある大崎市は震度5強。16日の受験に備えて高速バスなどの手段も模索したが、14日に臨時便の運航を知り、すぐ予約した。「飛行機を飛ばしていただいたことに、本当に感謝です」。鉄道路線図を見上げつつ、スマホで宿泊先までの電車経路を調べると、都内へ。同行の母親は「東日本大震災の時と同じくらい揺れました。私も受験ができるのかと、ドキドキでした」。息子の右腕に触れながら、寄り添った。

出張や、休日を利用して友人や家族に会うために東北に向かい、帰れなくなった人も多い。15日早朝の会議には間に合わなかったが、急いで駆けつけたサラリーマンも。仙台市の70代男性は「神奈川県に住む娘から無事に出産したと連絡が届き、妻とすぐに孫に会いに行きたかったのですが…。臨時便に助けられました」と明かし、急ぎ足でバス停に向かった。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動自粛の影響で利用者減に直面する航空各社だが、定期便のない路線も含めて臨時便を飛ばし、需要に応えた。14、15日の2日間で7路線28便を臨時運航したJALは、コロナの影響で減便していた羽田~三沢間も1往復復活。羽田と山形、秋田を結ぶ路線などでも便数や座席数を増やした。ANAもこの日、羽田~仙台の往復便などを臨時運航。両社は16日も臨時便の運航を継続する。一方、東北新幹線を一部運転中止しているJR東日本は、常磐線特急「ひたち」のいわき~仙台間を上下計4本で延長運転。乗客に安堵(あんど)の表情を生んだ、“ホットライン”となった。【鎌田直秀】