総務省は22日、菅義偉首相の長男らによる同省幹部の接待問題で、判明している4人ではなく計13人が接待を受けていたと発表した。

会食回数は延べ39回で、長男は21回に出席。「ズブズブの関係」だ。首相に近い山田真貴子内閣広報官も総務審議官時代、1回で7万円超の高額接待に出席。政権に衝撃が走った。13人中11人は懲戒処分などとなる見通し。首相は謝罪したが、前任の安倍晋三前首相に続く身内の問題で大打撃を受け、追い込まれ始めた。

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首相長男らによる接待問題は政権を巻き込み、泥沼の様相となってきた。総務省の報告によると、長男らの接待を受けた幹部は計13人に膨れ、会食回数は2016年以降、延べ39件。長男はこのうち、半分以上の21件に出席した。総務省は13人中11人について「利害関係者からの接待」に該当するなどと判断。国家公務員倫理規程違反で、24日に処分を発表すると決めた。減給や戒告とみられる。

放送事業の許認可権を持つ総務省と、一事業社の癒着の構図も明らかになった。長男出席の会食相手は、放送行政を所管する担当部署幹部がほとんど。総務省の谷脇康彦、吉田真人両総務審議官は22日の衆院予算委員会で、長男が勤務する「東北新社」以外の同業他社との会食を否定した。谷脇氏は4回の会食すべてで長男と同席し、タクシー代、土産代を含めて計11万8439円の接待を受けた。吉田氏も5回の会食中、長男と3回同席。接待額は6万5661円にのぼった。

首相は長男の入社の際「総務省と距離を置いて付き合うように言った」そうだが、実際は幹部と会食を重ねていた。首相は「驚いた」と語り、謝罪した。

13人には、首相が女性初の内閣広報官に抜てきした山田氏も含まれる。安倍政権の秘書官で、今は首相会見を仕切る。山田氏の会食は19年11月6日、東京・虎ノ門の1回だが、単価は7万4203円。「何を食べるとこういう金額になるのか。常軌を逸している」(立憲民主党の本多平直氏)という、浮世離れした額だ。山田氏は当初、会食の記憶はないと主張。調査には「放送業界全体の実情に関する話はあったかもしれないが、行政をゆがめるような不適切な働きかけはなかった」と述べたという。

山田氏は現在特別職の国家公務員で総務省の処分対象を外れるが、何らかの処分は避けられない。

総務省幹部は当初、国会で「記憶がない」と逃げ切りを図ったが、疑惑を報じた週刊文春の音声データが公表されるや、一部を認めた。疑惑の核心は「調査中」を盾に答弁を拒否したが、野党は「組織ぐるみの接待供応」と批判を強める。家族の問題がアキレス腱(けん)になる展開は安倍前首相と同じだが、今回は続々と事実関係が判明。首相が受けるダメージは甚大。大ピンチだ。【大上悟】