スーパーボランティアと呼ばれる尾畠春夫さん(81)が11日、東日本大震災で600人以上が犠牲となった宮城県南三陸町の追悼式に出席した。

地元住民たちは尾畠さんを見つけると、目を細めてうれしそうに声をかけ、旧友のように話し合っていた。5年ぶりに訪れた尾畠さんは「まだ(町は)変わってない。心から喜んでいる人はまだいないと思う。もとの生活には戻れないから。まだ半歩です」と復興が道半ばであると強調した。

震災直後の11年3月28日から500日間も同町でボランティア活動した。佐藤仁町長から「思い出探し隊」の初代隊長に任命され、がれきの中から、写真など思い出の品を探した。「あの当時の被災者の悲しそうな表情は言葉に言い表せないものだった」と振り返った。

この日のために車を自ら運転し、60時間かけて大分県から南三陸町に来た。当初、前日10日にテレビ局の企画で佐藤町長と対談を予定していたが、予定時間になっても姿を現さず。携帯電話を持たない尾畠さんと連絡が付いたときには、なんと岩手県一関市にいたという。佐藤町長は「涙もろくて情に厚い、いい人。ああいう人がいてくれると頼りになる」と話した。追悼式後も写真撮影に応じ、その度に「1+1は」「2」と元気な声を出して、触れあった住民たちの震災の悲しみを晴らしていた。【大野祥一】