総務省幹部らによる違法接待問題で15日、参院予算委員会の集中審議に放送事業会社「東北新社」の中島信也社長、NTTの澤田純社長が初めて参考人招致された。中島氏は子会社が外資比率で放送法違反となっていた不備を認めて謝罪したが、菅首相の長男が接待要員だったことは否定した。澤田氏は自民党の総務相経験者らとの接待で贈収賄疑惑は否定したが、野党からは厳しい質問が続いた。

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総務省幹部らによる違法接待問題は、異例の民間人2人の国会招致となった。東北新社は2016年7月から総務省幹部らを相手に計39回の接待を行い、半数以上の21回は同社に勤務する菅首相の長男正剛氏が同席している。立憲民主党の福山哲郎幹事長は正剛氏について「総務省の接待関係の重要な役割を担っていた」と指摘した。

東北新社の中島氏は「大変、優秀な若者でございますけれども、総務省との、接待要員のためにいたのではない」などと強調した。そして、正剛氏が「接待において一定の役割を担っていたとは考えていない」と、キーマン役だったことを否定した。野党側から接待を繰り返した目的を問われると「顔つなぎ」としたが、正剛氏の役割については「報告が上がっていない」との答えにとどまった。

また中島氏は、東北新社が17年8月に外資比率が規制対象の20%を超えて違法状態にあることを認識し「何とか認可を頂きたい」と総務省側に相談したと証言した。当時総務省課長だった鈴木信也総合通信基盤局電波部長に面会し、違法状態を回避するため子会社を新設し、衛星放送事業の承継を提案したという。

総務省側は「報告を受けた覚えはない。当時の文書やメモにそのようなものはなかった」などとし、両者の説明は食い違っている。野党は鈴木氏の参考人招致を求め、与党は容認する方針を固めた。

福山氏は、自民党の総務相経験者などへの高額接待が明らかになったNTT澤田氏に対し「菅首相と1度でも会食をしたことはあるか」と確認した。澤田氏は「上場企業の社長が個別にどなたかと会食をしたか否かを公の場で公開することは事業に影響を与える」と回答を拒み、「業務上の要請を行った。便宜を図っていただいたことはない。贈収賄の規定には反しない」と弁明した。

福山氏ら野党は澤田氏に武田良太総務相との会食の有無を質問したが、武田氏は「個別の事案1つ1つにお答えするのは控えさせていただきたい」と7回繰り返し、回答を拒絶。この日、総務省は職員ら計144人を対象に、実態調査を実施することを発表したが、疑惑は広がる一方で終息は見えない。【大上悟】