千葉県松戸市で2017年3月、ベトナム国籍の小学3年生レェ・ティ・ニャット・リンさん(当時9)が殺害された事件で、殺人、強制わいせつ致死、略取誘拐などの罪に問われ、1審で無期懲役の判決を受けた小学校の元保護者会会長・渋谷恭正被告(49)の控訴審の判決公判が23日、東京高裁で開かれ、平木正洋裁判長は控訴を棄却した。

弁護側は無罪を主張し、検察側は1審判決は軽く不当として極刑を求めて、ともに控訴していた。渋谷被告は出廷しなかった。

弁護側は、警察官が令状がないにもかかわらず、私有地に立ち入り、ごみ捨て場から渋谷被告のたばこの吸い殻を採取したのは違法で、DNA型など吸い殻にかかわる証拠は排除されなければならないと主張していた。平木裁判長はごみは所有権が放棄された無価物で、回収方法も穏当だったとして「重大な違法があったとは認められない」と退けた。

死刑を求めた検察側の控訴についても「犯行態様は冷酷非道だが、場当たり的で殺害に計画性は認められない。極刑がやむを得ないとは言えない」として、1審の判断を支持した。

判決は日本語で読み上げられた後、ベトナム語に翻訳された。検察官席の後ろはついたてで遮蔽(しゃへい)され、リンさんの父親ハオさん(38)が傍聴した。ベトナム語で検察側の控訴の棄却理由が説明されると、ついたての向こうから悔しそうに机をたたく音が聞こえ、すすり泣く声が漏れた。ハオさんは今日3月24日のリンさんの命日に「(死刑判決を)リンちゃんに報告できるよう願っている」と話していた。