東京五輪の聖火リレーは18日、香川県で行われ、NBAトロント・ラプターズ渡辺雄太(26)の両親がランナーとしてトーチを握った。自宅のある三木町で、母久美さん(59)から父英幸さん(62)に聖火をリレー。2人は「無事に大役を果たせた」と声をそろえ、トーチキス後のポーズでは渡辺が試合で行っているパフォーマンスでバッチリきめた。

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三木町で10人目の走者、177センチの久美さんから最終走者、190センチの英幸さんに聖火が引き継がれた。

2人とも元バスケットボール選手だったこともあり、シュートポーズで息を合わせた。久美さんは渡辺が3ポイントシュートを決めた際にOKマークで指3本を立てるパフォーマンス。英幸さんはトーチを右手で握っていたので「雄太はサウスポーだから」と左手で美しいシュートフォームを披露した。

「ウチら夫婦のポーズはバスケットボールのシュート以外にないからね」と英幸さんが目尻をさげ、久美さんが笑顔でうなずいた。

1964年の東京五輪でも香川県に聖火リレーが巡ってきた。当時は高松市在住で幼稚園年長だった英幸さんは「雨降る中、オヤジと一緒に見た記憶はある」と思い起こし「でも、白黒テレビの五輪放送はほとんど覚えていなくてアベベが走る姿くらいしか覚えていない」と語った。

世界的なコロナ禍で渡辺も昨年8月から2カ月、帰国して実家でのんびり過ごした。久美さんは「雄太は練習をしたかったんでしょうけど、こんなに長く一緒に生活できて夢のようでした」と話した。NBAでは5月中旬でシーズンが終了する。選手には30日間はプレーを禁じて体を休める規約がある。「代表にも合流できなくて時間があるなら、その休暇期間でまた雄太と過ごせるかも。手作りのギョーザを食べさせたい。うどんはおいしいお店に家族で行きたいですね」と母親の顔を見せた。

14日には男子バスケットボールの日本代表候補32人が発表され、渡辺も名前を連ねた。16日に3人で電話で話したが五輪関連の話題はなく、たわいもない近況を報告し合ったという。「沿道のみなさんから五輪への期待感はひしひしと伝わってきた。雄太や(八村)塁くんら日本代表が世界を相手にどう戦うのか。みなさんにバスケの楽しさを味わってもらいたい」と英幸さんは火の消えたトーチを握りしめた。【寺沢卓】

▼バスケ一家 渡辺は小学1年でバスケットボールを始め、尽誠学園から米ジョージ・ワシントン大に留学。2018年、メンフィス・グリズリーズと契約し、現在はトロント・ラプターズ。父英幸さんは香川県出身、実業団の熊谷組でプレーし、選手として1990、92年にリーグ優勝し、92年はオールジャパンも制した。その後チームは94年に廃部。母久美さん(旧姓久保田)は当時常勝のシャンソン化粧品に所属し、チームと日本代表で主将としても活躍したが「夢だった五輪出場は果たせず雄太に託しています」。姉夕貴さん(28)は名門桜花学園(愛知)に入学し全国8強、11年からアイシンAW(現シーホース三河)でプレーし14年に引退。

◆18日の聖火リレー 香川県2日目は坂出市からスタート。瀬戸内海に浮かぶ与島や映画「二十四の瞳」の舞台となった小豆島、三木町などを経由して高松市でゴール。小豆島では男子バレーボールの代表で監督を務めた植田辰哉さん(56)、高松市では野球独立リーグ香川オリーブガイナーズの“美人すぎる社長”と呼ばれる三野環さん(44)がトーチを握った。19日は高知県に入る。高知市ではタレント島崎和歌子(48)四万十市では高知競馬の浜尚美騎手(19)宿毛市では今年10月に断髪式を行うためまだマゲを落としていない大相撲の井筒親方(37=元豊ノ島)が走る。