東京オリンピック(五輪)・パラリンピック開催の可否をめぐる論戦が、国会審議の大きな焦点となった。

10日、衆参両院で予算委員会の集中審議が開催され、一貫して開催論を唱える菅義偉首相は、野党側から可否判断を迫られて防戦一方となった。立憲民主党の枝野幸男代表からは感染拡大が止まらない現状に「国民の命、暮らしを守ることと、開催を両立させることは不可能」と中止を強く主張された。

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東京五輪・パラリンピック開催まで残り74日となり、国会論戦は開催可否をめぐる議論に焦点が移り、政府と野党側が攻防を繰り広げた。立民の枝野代表は「私もオリンピック見たいです。奇跡的に、ここから感染抑制ができて、開催できることを期待している」と前置きした上で、「国民のみなさん、来日される方の命と健康を守る。これとオリンピック・パラリンピック開催を両立させることは不可能と言ってもいい」と反対論を強く主張した。

菅首相は「政府としては国民全体の安心、安全を守る立場から水際対策を中心として感染症対策に万全を尽くす」と何度も繰り返したが、議論はかみ合わなかった。「最終的に決定するのはオリンピック憲章でIOC」とした菅首相に対し、枝野代表は「これは我が国の国家主権そのもの。IOCの判断とか意見に左右されることなく、命と暮らしを守るという観点から政府が独立して判断するもの」と踏み込んだ。

東京五輪・パラリンピックで選手だけで約1万5000人が来日、大会関係者らは全体で約9万人の訪日が見込まれ、組織委員会による抑制策でも6万人が限界とも言われ、政府、組織委員会も具体的な数字を明らかにしていない。「間違ってもオリンピックのせいで、感染がさらに拡大したなんてことは許されない」と追及した枝野氏に、菅首相は「選手や大会関係者と一般の国民が交わらないようにする」と強弁した。

世界各国から報道陣や、公式スポンサーの招待客などは別枠だ。丸川珠代五輪相は「指定されていない行動範囲を管理されない状況で、うろうろするということは絶対にない状況にしていく」とし、菅首相も「絶対にないようにします」と断言したが、実効性が懸念される。立民の蓮舫代表代行は菅首相のやりとりに「どうして、こうやってあまりにもすれ違うのかが、毎回分からない」と、いらだちを隠せなかった。

延長が決まった3度目の緊急事態宣言下でも全国的な感染拡大が止まらない。

五輪開催の可否をめぐる議論は、さらに国会の舞台に過熱し、最終的な政治判断を求める声が高まるのは避けられない。【大上悟】