新型コロナ感染対策で強い提言を続けてきた日本医師会中川俊男会長がトーンダウン、迷走している。2日の定例会見で、政府や組織委員会への東京五輪・パラリンピック医療体制の提言について「それは日本医師会というよりも、オリンピックは東京都医師会とか、競技が行われる都道府県の医師会、地域医師会のみなさんが発信するのがベター」と明言した。

五輪の医療体制の提言を各地区の医師会に丸投げするとも受け取れる発言だけに波紋が広がりそうだ。開催可否についても「(状況は)まだまだ本質的には変わりない。まだまだ見解を申し上げる時期ではない」と明確な回答を避けた。

これまで中川会長は政府に対して「一刻も早く」と緊急事態宣言などの早期発令を求め、早期解除の動きに厳しく警告を発するなど日本の医療現場を代表して声を上げてきた。しかし、まん延防止等重点措置が適用中の4月20日、自らが発起人を務めた自民党議員の政治資金パーティー出席と、不要不急の外出自粛や3密回避が叫ばれていた昨年8月、夜に都内の高級すし店で女性と会食した問題を「週刊新潮」で追及され、批判を浴びた。

中川会長は「週刊誌報道の1つ1つに答えるつもりはございませんが、私は言われているような(女性と)個人的な関係は、まったくございませんし、医師会のルールに基づいた処遇をきちんとしているつもり」と釈明した。政治資金パーティーは「最終的に判断を誤った。発起人として新たな人流を作ってしまったことについては申し訳ないと思っています。このような判断の誤りがないように自分の職責を全うして信頼回復に務めていきたい」と会長続投の意思を示した。

逼迫(ひっぱく)する医療提供体制、東京五輪中止の論調は日増しに高まっている現況で、今こそ、日本医師会の強い発信力が必要とされる。【大上悟】