岸田文雄新総裁が、総裁選勝利から一夜明けた9月30日、党役員人事に着手した。午後6時20分すぎに党本部を離れた岸田氏は「まだ作業中です」としたが、党運営の中心を担う幹事長、総務会長、政調会長、選挙対策委員長の「党4役」人事は固まり、総裁選で決選投票を戦った河野太郎行革相は「党4役」から除外する事実上の冷遇となった。

党運営の要となる幹事長には、甘利明税制調査会長(麻生派)が内定した。幹事長は党内の人事権を掌握し、金庫番として党資金を管理、選挙の公認などにも強い権限を持つ。これに先だって岸田氏は麻生太郎財務相と会談し、党人事を巡って協議した。総裁選では甘利氏ら麻生派の重鎮が派閥所属の河野氏ではなく、いち早く岸田氏を支持。中でも甘利氏は岸田氏の選対顧問を務め、他派閥の議員票の切り崩しに尽力した。

一方で岸田氏は総裁選を戦った3候補の登用を明言し、「ノーサイド、全員野球だ」と党内融和を明言したが、河野氏が内定したのは広報本部長。兼務するワクチン担当相として最前線を担ったが、再任されることもなくなった。

論功行賞の人事が浮き彫りになった。総務会長には当選3回の福田達夫衆院議員(細田派)を抜てき。福田氏は約90人の若手グループ「党風一新の会」の代表世話人として自主投票による党改革を訴えた。同会の仕掛け人は安倍晋三前首相と言われ、福田氏は当初から岸田氏支持を表明し、貢献した。

安倍氏が擁立し、決選投票で岸田氏支持に回った高市早苗前総務相は政調会長、岸田陣営の選対本部長を務めた遠藤利明元五輪相(谷垣グループ)は選挙対策委員長に内定。注目の官房長官には松野博一元文部科学相(細田派)を起用する方針。

岸田氏を新総裁に押し上げた「3A」と言われる安倍氏、麻生氏、甘利氏の影響力は急拡大し、総裁選協力の見返り要求にあらがえない岸田氏の立場が、党人事に色濃く反映された。新総裁の初仕事から、組閣人事でも、3A忖度(そんたく)内閣が誕生する可能性が高まってきた。【大上悟】