自民党の岸田文雄総裁は1日、新執行部を発足させた。新総裁に尽力した「論功行賞」人事で、「3A」と言われる盟友の安倍晋三前首相、麻生太郎財務相、甘利明前税制会長が、新たに党内の実権を握る構図が浮き彫りとなった。

党運営の中枢を担う新幹事長となった甘利氏は就任会見で「政治とカネの問題」を突きつけられた。2016年1月に建設業者側からの金銭授受を認め、起訴された。不起訴となったが辞任。説明責任を追及されると「当然、不起訴になると信じていた。辞任会見では質問が出尽くすまでお答えしました」と強調した。

組織運動本部長に就任した小渕優子氏(竹下派)も経産相だった14年10月、政治団体が主催した観劇ツアーの支出が収入を大幅に上回ったことが発覚して辞任。「すねに傷持つ」2人が3A台頭で返り咲いた。

総裁選の決選投票で岸田氏を支持した高市早苗前総務相(無派閥)は政調会長に再任された。派閥を横断した若手議員グループを立ち上げ、自身は岸田氏を支持して貢献した福田達夫氏(細田派)は3期目ながら総務会長に抜てき、岸田陣営の選対委員長を務めた遠藤利明元五輪担当相(谷垣グループ)が選対委員長に就任。副総理兼財務相の麻生氏は副総裁となる。

閣僚人事でも3Aカラーが色濃い。岸田氏は官房長官には松野博一元文科相(細田派)、麻生氏に代わる財務相に鈴木俊一前総務会長(麻生派)、経産相に山際大志郎氏(麻生派)を起用する方針を固めた。茂木敏充外相(竹下派)は再任の方向だ。二階俊博幹事長の退任で3Aが君臨。岸田氏は「私の特技は人の話をよく聞くことだ」とするが今回は「3Aの話をよく聞いた」丸のみ人事。岸田カラーの見えない船出だ。【大上悟】