スウェーデンの王立科学アカデミーは5日、2021年のノーベル物理学賞を、米プリンストン大の真鍋淑郎・上席研究員(90=愛媛県出身、米国籍)ら3氏に授与すると発表した。

真鍋さんはコンピューターを駆使し、大気と海洋の循環を考慮した気候変動のモデルを開発。温室効果ガスに注目し、地球温暖化に関する研究を続けたパイオニアとしての業績が評価された。日本人のノーベル賞受賞者は28人目、物理学賞は15年の梶田隆章東京大卓越教授以来12人目の快挙となった。

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真鍋さんの授賞理由は「地球の気候と地球温暖化の予測に関する物理モデルへの貢献」。90歳でのノーベル賞受賞は日本人としては最年長だ。米国在住で、「非常にありがたく、タイムリーな賞だ。ノーベル物理学賞は、僕のような研究をして受賞した人は過去にいない。気候物理学というトピックで受賞したことを光栄に思っている。初めは気候変動がこれほど問題になるとは夢にも思っていなかった。好奇心を満たす研究を続けてきただけだ」とのコメントを出した。

愛媛県出身。医者の家系で、自分も医大に入るが、暗記が苦手だったことなどから辞めたという。東大理学部に入って気象学を学び、58年に東大大学院博士課程を修了。この年、米気象局(現・海洋大気局)から招かれて渡米した。コンピューターの生みの親フォン・ノイマンが提案した、天気をコンピューターで研究する数値予測について書いた論文が、ノイマンの弟子の目に留まり声をかけられたという。

米国ではコンピューターを駆使。大気の流れと海洋の循環を組み合わせ、長期的な気候の変化をコンピューター上でシミュレーションする「大気・海洋結合モデル」を69年に発表するなど、画期的論文を次々発表。「コンピューターを世界で最も使った研究者」といわれたこともある。

興味の対象は、大気を暖める効果がある二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスにも向かった。かつて「温室効果ガス増加に伴い、大気の温度が高度によってどう変化するのかということに関心を持った」と説明し、当初は「温暖化への危機感があって取り組んだわけではなかった」と振り返ったという。二酸化炭素(CO2)の増減が気温に影響することを示すなど、地球温暖化の予測に関する研究で世界をリードし続けた。

受賞が決まった他の2人はドイツのマックス・プランク気象学研究所のクラウス・ハッセルマン教授(89)とイタリア・ローマ大のジョルジョ・パリージ教授(73)。授賞式は昨年に続きオンラインで12月10日に開かれる。賞金1000万クローナ(約1億2000万円)の半分をパリージ氏が受け取り、残る半分を真鍋氏とハッセルマン氏が等分する。