東京都の小池百合子知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が国政進出に向けて結党した「ファーストの会」は15日、衆院選(19日公示、31日投開票)での候補者擁立を断念すると発表した。

「ファーストの会」は今月3日に都内で結党会見を開いて、衆院選で候補者を擁立の方針を発表したばかり。候補者の公募方針も明かしていたが、岸田文雄首相が当初予想されていた衆院選の時期を一気に前倒ししたことで、候補者選考などを含めた衆院選に臨む体制づくりの準備が間に合わず、2週間もたたずに「撤退表明」に追い込まれた形だ。

実際、ファーストの会が荒木千陽代表名で発表した文書では「国政政党に有利な選挙制度の下、異例ともいえる戦後最短の日程で公示日が早まったことなどを受け、都民の期待に沿う戦いは難しいと判断し、次の国政選挙にむけて取り組んでまいります」と記載。早期解散が、今回の参戦見送りの一因になったことを明かしている。

ただ都政関係者によると、候補者擁立作業は当初から難航。母体の都民ファ内部でも、衆院選参戦派と、今回は見送りを求める派で二分されるなど、混乱していたという。

小池氏と親交があり、水面下で連携を模索した上田清司参院議員が結党を目指した「上田新党」が、今回、結党を見送ったことも影響したようだ。

一方、ファースト側は、公募に「多くの有為な人材にご応募いただいた」とした上で、「同じ志を持つ国政の方々や、この国の未来を憂う同志とも言うべき方々からも、様々なお声がけをいただきました」とし、国会議員からも参加の要望があったことを示唆。「引き続き連携を模索していきたいと考えております」とも強調した。

ファーストの会の動向をめぐっては、将来的な小池氏の「国政復帰」に向けた足場になるのではないかとの見方があり、自民党は警戒を強めている。そのため、ファーストの会の衆院選参戦断念は、衆院解散から投開票まで戦後最短という超短期決戦に踏み切った岸田首相や、選挙を仕切る自民党の甘利明幹事長の「作戦勝ち」との見方も、永田町では出ている。

小池氏はこの日の定例会見でも、自身の衆院選出馬を否定していた。