将棋の史上最年少4冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖=19)が年明け早々から大一番に臨む。

渡辺明王将(名人・棋王=37)に挑戦する「第71期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局」が9日からの2日制で、静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」で始まる。決戦開始前日の8日、両者は現地入り。対局会場の検分や会見、同市内のホテルに移動しての前夜祭などの行事をこなした。

掛川初見参の藤井は会見で、「天守が近くに見えて、落ち着いて良い雰囲気の対局場だと思いました」と印象を述べた。約1カ月、公式戦から遠ざかっているが、初戦を意識して序盤の研究などをしてきたという。

一昨年、昨年と1日制の棋聖戦5番勝負で渡辺とは戦っているが、2日制7番勝負では初対決。過去の対決は8勝2敗と大きくリードしている。「これまでとは違った強さを感じることになると思います。それにしっかり対応したい」。

迎え撃つ渡辺が王将戦掛川対局で6戦6勝というデータを示されると、「あまりうれしくないことを聞きました」と苦笑いした。瞬時に「フラットな気持ちで全力を尽くしたい」と切り返した。

今年の将棋界を占う注目のシリーズで、史上最年少5冠がかかる。「自分自身、タイトルの数を意識することはない。1手1手しっかり深く考えて、注目していただいているシリーズにふさわしい将棋ができるようにしたい」と、抱負を語った。

掛川市は、戦国武将の山内一豊が関ケ原の戦いに際して、徳川家康率いる東軍に居城を明け渡して勝利に貢献した。この功績により、一躍土佐(現高知県)1国を与えられる出世につなげた。一豊を主人公にした司馬遼太郎の小説「功名が辻」ではないが、ここで功名を上げ、盟主交代と5冠達成の足掛かりを築く。【赤塚辰浩】

 

【城と将棋】17世紀の江戸時代から、江戸城御黒書院(おんくろしょいん)で徳川歴代将軍を前にして年に1回、対局が行われていた。8代将軍徳川吉宗の時代になって、「御城将棋は11月17日」と定められた。

日刊スポーツが女流王将戦を主催していた1997年(平9)には、宮城県白石市の白石城天守閣で午前の対局(午後は同市内のホテルに移動)だけ開催した。最近では09年名人戦を熊本城(熊本市)、18年竜王戦を福知山城で行った例などがある。

このほか、京都・仁和寺(にんなじ)や千葉・成田山新勝寺といったお寺、茨城・鹿島神宮や都内の東郷神社、神田明神などの神社、昨年藤井が棋聖を防衛した「沼津御用邸東附属邸第1学問所」、能楽堂や料亭、茶室など、和文化にふさわしい対局場をタイトル戦で用意することがある。