将棋の史上最年少4冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖=19)が王将奪取と5冠獲得に好スタートを切った。

9日午前9時からの2日制で行われていた第71期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局(静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」)で、10日午後7時27分、139手で渡辺明王将(名人・棋王=37)を下した。王将戦掛川対局6戦全勝の冬将軍を攻略して、開幕局を制した。

今年の将棋界を占う、史上初の3冠対4冠の注目シリーズは、初戦から双方1分将棋となる死闘となった。二転三転するもつれ合い。「いろいろミスはあったかなと思いますけど、秒読みなので分からないままやっていました」。若き4冠はこう振り返った。

相掛かりの出だしは、9日の昼食休憩(午後0時30分から1時間)前後の42手目、後手渡辺の手番になるとガクンとペースが落ちた。お互いに時間を消費して1手1手考える。9日午後6時の封じ手まで、進んだのはわずか5手。いつ開戦してもおかしくない状態にはなっていた。

超スローペースを引き継いだ2日目は、再開された午前9時から小競り合いが夕方まで続いた。午後3時のおやつ。昨年8月の王位戦7番勝負第5局で王位初防衛を果たしてから、同10~11月の竜王戦7番勝負で4連勝するまでずっと、飲み物2種類で通していた。この日も同じでパイナップルジュースとアイスティーだけとし、6連勝した。過去に例のない手探りの将棋に、固形のおやつを食べる間もなく考えた。

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時間と神経を削り合うジャブの応酬で渡辺の小刻みな攻めを巧みにかわし、難解なねじり合いの混戦を抜け出した。「先手4三金(133手目)から先手4五銀(135手目)の形できわどく詰んでいると思いました」。

死闘の末にもぎ取った幸先よい1勝。5冠達成へ、まだまだ道のりは遠いが、足掛かりになりそうだ。「第2局に向けて、しっかり振り返ってつなげられるようにしたい」。

一気に連勝するか? 渡辺がタイにするか? 第2局は1月22、23日、大阪府高槻市「山水館」で行われる。【赤塚辰浩】