「ウクライナに平和を! 原発に手を出すな! 市民アクション」と題した反戦、反原発を訴える集会が21日、東京・代々木公園で行われ、ウクライナの民族楽器「バンドューラ」奏者で歌手のナターシャ・グジーさん(42)が歌で故郷に勇気を送った。

壇上での自己紹介から流ちょうな日本語を披露した。「私は生まれも育ちも葛飾柴又。ではなく、ウクライナです」。映画「男はつらいよ」主人公寅さんの言葉を引用し、2500人超の参加者を笑わせ、心をつかんだ。幼少期のプリピャチ在住時、86年のチェルノブイリ原発事故で避難生活を余儀なくされた経験もある。「そんな時に出会った音楽が、どんなにつらい時も悲しい時も、いつもそばにいて励まし、勇気づけてくれました」。

童謡「ふるさと」を日本語で歌った。「ウサギ追いし、かの山~♪」「忘れがたき、ふるさと~♪」。故郷に届けとばかりの澄んだ美声。ウクライナへの思いとともに心に染みた女性が涙を流す場面もあった。

96年に、子供音楽団メンバーとして初来日し、22歳の00年に日本へ移住した。キエフに住む母マリアさん(68)が、この日午後、避難していたポーランドから日本に無事到着。同じ演奏家として活躍する横浜市在住の妹カテリーナさん(35)と一緒に暮らすが、2人の姉は今もキエフで不安な日々を過ごしている。

その後のデモは代々木公園を発着に、渋谷駅や原宿駅など都心を巡った。「戦争反対」「プーチン侵略やめろ」などと声を合わせ、休日で若者があふれる歩道ではなく、交通量の多い道路の1車線を使った大行進。主催団体「さようなら原発」の鎌田慧さんは「原発はロシア軍に制圧されている。戦争の目的にしかならない。原発、核から脱却を」と語気を強めた。91歳の沢地久枝さんも「なんで21世紀になって国が国を武力で行使するのか。子どもたちが涙をたっぷりためている。大人として責任を感じる」。全国の50社を超える団体が賛同、集結し、一刻も早い停戦を願った。【鎌田直秀】