ウクライナのゼレンスキー大統領(44)が23日午後6時から、日本の国会でオンラインで演説した。ロシアによる侵攻について、原発事故、津波、サリン、復興など、日本が経験してきたことを念頭に置いたとみられる言葉をちりばめながら現状を説明。「日本がすぐ援助の手をさしのべてくれました」と感謝しつつ、ロシアへの制裁継続やさらなる支援などを求めた。

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ゼレンスキー大統領は、ウクライナ語で行った約12分間の演説のほぼ全編に、日本にも関連するキーワードをちりばめて、日本国民に語りかけた。冒頭で「日本はすぐ援助の手を差し伸べてくれました」と感謝を伝え、侵攻後すぐに制圧されたチェルノブイリ原発に言及。「事故があった原発を想像してみてください」と、東京電力福島第1原発事故を経験している日本人に響く言い回しで説明した。国内の現役の原発4カ所について「非常に危険」とし、ロシアが「サリンなどの化学兵器を使った攻撃を準備しているとの報告を受けている」とも指摘した。

ロシアの無差別攻撃については「1000発以上のミサイルが落とされ、数十の街が破壊されている。多くの街では、家族らが殺されてもきちんと葬ることもできず、庭や道路沿いなど可能なところに葬っています」などと伝えた。

ロシアへの制裁に加わった日本について「アジアで初めてロシアに対する圧力をかけたのが日本」とし、制裁の継続を訴えて「ウクライナ侵略の『津波』を止めるため、ロシアとの貿易を禁止しなければならない」と、東日本大震災を想起させる表現で要望した。また「ウクライナの復興を考えなければならない。避難した人たちがふるさとに戻れるようにしなければならない。日本のみなさんも、その気持ちが分かると思います」と訴えた。

国連が機能していないため改革が必要とし「本当に侵略を止められるようなツールをつくらなければ。日本のリーダーシップが大きな役割を果たせると思う」とも期待した。また日本について「調和を作り維持する力が素晴らしい。ウクライナ人は日本の文化が大好き」「距離があっても価値観が共通している」とも語り、最後には日本語で「ありがとうございます」と感謝した。

演説はウクライナ側の要望を受けて実現。モニターがある衆院第1議員会館の会議室で行われ、岸田文雄首相、衆参両院議長らが出席した。ゼレンスキー氏は各国でオンライン演説を続けている。国ごとに表現を変え、英国ではシェイクスピアやチャーチル首相、米国では9・11同時多発テロ、ドイツではベルリンの壁など、それぞれの歴史に関連した言葉を盛り込み、総立ちの拍手などを浴びてきた。日本でも、出席者から大きな拍手を受けていた。